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2018年4月21日

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樋泉克夫 (ひずみ・かつお)

愛知県立大学名誉教授

中央大学法学部、香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士後期課程を経て外務省専門調査員として在タイ日本国大使館勤務。著書に『華僑コネクション』『京劇と中国人』『華僑烈々―大中華圏を動かす覇者たち―』(以上、新潮社刊)など。

[著書]

 中央アジアにおける一帯一路の現状を見ようと思い立ち、3月末、愛知県のNPO法人の植林スタディーツワーに便乗しウズベキスタンに向った。韓国が世界に誇る巨大なハブ空港の仁川空港までは、中部セントレア空港から2時間前後。ここで乗り換えウズベキスタンの首都であるタシケントまでが7時間強。中国大陸をほぼ真西に向って横断したことになる。

 中部セントレア空港出発が午前9時半で、タシケント空港到着は現地時間の夜8時過ぎ。両国の間には4時間の時差があるから、日本時間で夜中の12時過ぎの到着になる。小規模の空港でロビーは薄暗く、今時、こんなにも小さく老朽化した空港は東南アジアではお目にかかれそうにない。

 狭い通路に人がひしめく。聞いて見ると、韓国での出稼ぎからの帰りだという。機内持ち込みの手荷物の数が半端ではない。揃いのジャンバーは、どうやら集団出稼ぎ組らしい。空港の規模と出稼ぎ者の数だけでも、この国の経済規模が推し測れそうだ。27年に亘ってウズベキスタンに君臨し、「最も残酷な独裁者の一人」と形容されたカリモフ前大統領(1938年~2016年)による恐怖政治の後遺症だろうか。

日本軍捕虜たちが建設に携わったヌボイ劇場

 義務付けられていた事前のビザ取得は日本出発直前に不要になったうえに、税関での荷物検査もナシ。昨年だけを見ても1月のトルコ・イスタンブールのナイトクラブでの無差別銃撃事件、4月のサンクトぺテルブルグ地下鉄車内での自爆テロ、その直後のストックホルム中心部での大型トラックによるテロ、10月のニューヨークにおけるピックアップ・トラックによるテロなど、ウズベキスタン人によるテロが多発しているだけに、空港は厳戒態勢にあり、入国に関しては身分や携行金品に対する厳重な検査があると事前に聞いていただけに肩透かしを喰らった思いだ。

ほぼ中国製のバスと韓国企業の看板

 空港を出て最新大型観光バスでタシケント・ホテルに向かう。ガイドの話では、現政権の観光振興政策にのって観光バスが急増中だが、新型はほぼ中国製だとのこと。ホテルはタシケント第一との触れ込みだったが、素人目にも老朽化が激しい。ソ連時代の1970年代に建設されたということだから、やはりデザインは武骨で機能性無視で使い勝手が悪過ぎる。部屋の調度の立てつけがヒドイ。経年劣化に加え、最初から手抜き工事だったようにも思える。であればこそ、シャワーから温水が出るだけでも満足すべきかもしれない。

 翌朝、市内を歩く。美観を全く無視したような味も素っ気もないソ連時代のビルとデザイン性に富んだ近代的ビルが混在する。やけに目立つデーウー、サムソン、LGなど韓国企業の看板の間に、ハイテクのホワウエイ(華為)、家電のハイアール(海爾)、スポーツ用品のリ・ニン(李寧)など中国企業の看板も目に付く。

 日本企業のものはないかと目を凝らしたが、わずかに小さな日立と色の剥げ落ちたフジ・フィルムの広告を見かけただけ。日本企業では三菱商事以外は目だった動きはなさそうだ。

 一方、ハイアールの工場が進出していることから同社関係の中国人家族が高級マンション地区に集団居住し、小さなチャイナタウンの様相を呈しているとも聞いた。そのうちにタシケントにも中華門を構えたチャイナタウンが建設されないとも限らない。中心部の一角には「孔子学院」まで。ソフト・パワーの策源地ということだろう。

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