チャイナ・ウォッチャーの視点

2018年5月30日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

北朝鮮・金正恩氏は再び訪中し大連で習主席と会談した (提供写真、提供:KNS/KCNA/AFP/アフロ)

 2018年5月24日、トランプ大統領は、6月12日にシンガポールで予定されていた金正恩委員長との首脳会談を取り消した。金正恩委員長宛てに書簡を送り、「最近の発言にすさまじい怒りとあからさまな敵意が含まれていた」ことを理由として、会談の取り止めを通告したのだ。

 通告は、米国が北朝鮮の米朝首脳会談中止の警告に応えたものである。トランプ大統領の中止通告に先立つ5月16日、北朝鮮は、米国が一方的な核兵器の放棄を要求し続けるなら、米朝首脳会談を中止する意向だと明らかにしていたのだ。北朝鮮の金桂冠第1外務次官は、「米国が向こう見ずな発言をし、悪意を隠し持っている」と強く非難し、ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を名指しで批判している。

中国の後ろ盾を得て
強硬な態度をとり始めた北朝鮮

 米国の会談中止通告は、北朝鮮にとって予想外だったように見受けられる。通告翌日の5月25日、トランプ大統領は、金正恩委員長との首脳会談について、ツイッターに「開かれるとすればシンガポールで、同じ6月12日になりそうだ」と投稿したが、米国が一方的に譲歩したわけではない。

 トランプ大統領が同日、記者団に対して述べた「彼らは(会談を)とても望んでいるし、われわれも行いたい」という表現は、北朝鮮から米国に対して、米朝首脳会談実現についての働きかけがあることを示唆している。さらに、金桂冠第1外務次官は、同日に発表した談話で、「いつでも、いかなる方式であれ、向かい合って問題を解決する用意がある」と述べ、首脳会談が「切実に必要」だと訴えているのである。

 それに加えて、北朝鮮は韓国も利用して米朝首脳会談を実現させようとしている。5月26日、文在寅大統領と金正恩委員長が、軍事境界線上にある板門店の北朝鮮側施設「統一閣」で予告なしに会談した。両首脳の会談は、4月27日以来、2回目である。開催が危ぶまれる米朝首脳会談の実現などについて意見交換したのだ。

 しかし、北朝鮮は、5月16日に、米韓合同軍事演習「マックス・サンダー」を理由に、南北閣僚級会談の中止を宣言したばかりである。北朝鮮の報道によれば、北朝鮮祖国平和統一委員会の李善権委員長は「南北閣僚級会談を中止させた重大な事態(米韓合同軍事演習)が解決されない限り、韓国の現政権と再び対座することは容易ではない」と主張しているのだ。その上で、「今後の北南関係の方向は全面的に韓国当局の行動に懸かっている」と警告している。その舌の根も乾かぬうちに、2回目の南北首脳会談が行われたのだ。

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