チャイナ・ウォッチャーの視点

2018年4月12日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 中国国営新華社と北朝鮮の朝鮮中央通信は、2018年3月28日、金正恩朝鮮労働党委員長が同月25日から28日に訪中し、習近平国家主席と会談したと伝えた。電撃訪問である。今回の訪中は、金正恩委員長が北朝鮮の最高指導者の座に就いた2011年以降、初めての外遊となった。

(提供:KCNA/UPI/アフロ)

 新華社によると、金正恩委員長は会談で非核化への強い決意を表明した。金正恩委員長が「米韓が北朝鮮の努力に友好的な態度で応じ、平和的・安定的な雰囲気を作り出し、前向きで歩調が合った平和実現に向けた措置を取れば、朝鮮半島の非核化問題は解決できるだろう」と話したというのだ。

「韓国主導」は許せない北朝鮮

 中朝両国は、本年5月に予定されている米朝首脳会談を前に関係修復を図ったと考えられるが、北朝鮮はこれまで、核兵器開発問題に関する対話の相手は米国のみだとしてきた。2016年10月にクアラルンプールで北朝鮮政府高官と協議を行った米元国務次官補は、当時、「中国に頼って問題を解決しようとする米国の姿勢にいらだっている」と指摘している。

 さらに、2017年5月3日には、北朝鮮が中国を名指し批判した。朝鮮中央通信が、中国が米国に同調して北朝鮮に圧力をかけているとし、「親善の伝統を抹殺しようとする容認できない妄動だ」、「長い伝統を持つ隣国への露骨な威嚇だ」と強く非難する論評を伝えたのだ。北朝鮮による中国の名指し批判は極めて異例で、北朝鮮の中国に対する非常に根深い不信を示している。

 その北朝鮮が中国との関係を改善しようとしたのには理由がある。韓国の動きだ。2018年3月9日午前9時、韓国による「重大発表」が行われた。韓国の鄭義溶国家安全保障室長が、トランプ米大統領が金正恩委員長の会談要請を受け入れたと発表したのだ。米朝首脳会談は、2018年5月中に実施される予定である。

 北朝鮮が中国の関与さえ排除しようとしてきた米朝直接対話について、韓国が音頭をとるような動きを見せ、何とトランプ大統領の米国がこれに乗ってしまったのだ。北朝鮮としては、米朝首脳会談を働きかけた以上、これを拒否することはできないが、韓国が主導して、あたかも三カ国協議のような形になることは許容できない。北朝鮮にとって、核抑止に関する問題はあくまで米朝間の問題なのである。

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