WEDGE REPORT

2018年6月6日

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地方自治体主導の限界
求められる国の政策転換

 サバやスルメイカのような回遊性の生物だけでなく、前述の通り両津におけるホッコクアカエビのような非回遊性の生物ですら、IQ方式で資源管理しようとした場合、それは地方自治体の手の及ぶ範囲を超える。「IQ方式は一県や一地区でやるべきものではない。せめて『日本海でやる』くらいの広域性がないと実効力がない」と、佐渡振興局の渡辺副部長は語る。

 では、水産庁はどう動いているのか。最新の水産白書では「ミナミマグロおよび大西洋マグロ」「鳥取県境港を中心とした山陰沿岸海域におけるベニズワイガニ」「北部太平洋におけるサバ」で、国主導でIQ方式を実施しているとする。

 しかし水産庁に話を聞くと、マグロについては、同2種は日本近海には生息しておらず、日本の領域外での話であった。ベニズワイガニについては、国管轄の12隻のみが対象であり、県管轄の漁船は含まれていない。

 サバについても、青森県沖から千葉県沖で操業する国管轄の大中型まき網漁船を対象に、試験的にIQ枠を振り分けて行っている。だが沿岸部の漁業者まではカバーできていない。つまり現在、水産庁が国と県の管轄をまたいで資源管理を実施している事例は、存在しない。

 水産庁は「漁業の実態を踏まえつつ、可能な限りIQ方式を活用する」とし、両津のような利害対立でIQ方式導入が進まない事例については、あくまでも漁業者間でのコンセンサスが取れた上で関与していくという姿勢だ。

 しかし勝川准教授は「私が知る限り、漁業者全員が規制の導入に賛成した国などどこにもない。ノルウェーやニュージーランドでも、漁業者の強い抵抗を押し切って国がIQ方式を導入し、その結果漁業が儲(もう)かるようになった。『漁業者が反対するから規制をやりません』という立場では、今後も漁業の衰退は続くだろう。たとえ一部の漁業者が反対をしたとしても、水産資源の持続性は守るという社会的な合意を形成することが重要だ」と指摘する。

 先の見通せない漁業の未来。両津のエビ篭漁業者は取材の最後に「もはやエビ篭漁業者単独でIQ方式をやってもいいのではという気もしている。代わりに夏季休業の解禁などが得られるのは大きい。少しでも漁業にいい方向が、光が見えるのであれば、何もしないでいるよりいい」と、悲痛に語った。

PART 1.ルポ・佐渡島、水産資源管理の〝成功事例〟が広がらないワケ
PART 2.無用の長物と化す「豪華漁港」に予算を費やす水産行政
 

 

 

 

 

PART 1.ルポ・佐渡島、水産資源管理の〝成功事例〟が広がらないワケ
PART 2.過剰な漁港整備に予算を費やす水産行政、無用の長物と化す”豪華漁港”の実

 

 

 

  

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◆Wedge2018年6月号より

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