前向きに読み解く経済の裏側

2018年6月4日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 日本人の金融資産の多くは銀行預金ですが、これは危険な事です。今回は、『老後破産しないためのお金の教科書』の著者である塚崎が、銀行預金について説明します。

日本人の家計金融資産の大半は預金と保険

(William_Potter/iStock)

 日本人の金融資産の過半は預金です。約3割が保険等で、株式等は2割に満たない割合です。これは危険なことです。といっても、銀行や保険会社が破綻すると銀行預金等が戻ってこない、という意味ではありません。

 元本1000万円までの銀行預金とその利息は、銀行が破綻した場合も政府(厳密には預金保険機構)が払ってくれますので、預金者は損はしません。多額の預金を持っている人は、複数の銀行に分けて預ければ良いので、心配は無用です。外貨預金などは例外ですので要注意ですが。保険にも類似の制度がありますから、保険会社が破綻した場合でも、原則として顧客の損失は限定的です。

 したがって、銀行預金や保険は安全資産だと思われています。米国等に比べて遥かに預金と保険の比率が高いことは、日本人の「ローリスク・ローリターン志向」を映じたものである、と理解されているわけです。

 しかし、銀行預金も多くの保険もリスク資産である、という認識を持つべきです。インフレが来れば目減りするからです。金額的には減らなくても、インフレによって同じ金額で買える物が減れば、生活水準は貧しくなってしまうわけです。

資産運用はインフレのリスクにも備える必要

 1000万円貯めることを目標にして頑張っている人は、1000万円の預金通帳を眺めて暮らしたいわけではなく、1000万円あれば実現するであろう生活を夢見ているわけです。ということは、インフレが来て今の1000万円で買える物が1000万円では買えなくなってしまうリスクには備えておく必要があるのです。

 インフレは、来るのでしょうか? 過去30年間、日本はデフレに悩んで来ましたし、黒田日銀総裁が頑張ってインフレ率を上げようとしても、なかなかインフレ率は上がりません。そこで、インフレは来ないと思っている人も多いようですが、筆者はインフレの危険に備える必要があると強く思います。

 第一は、労働力不足です。労働力不足でヤマト運輸が荷物を運びきれなくなり、値上げをしました。通常であればライバルは値上げせずにヤマト運輸の荷物を奪いにくるでしょうが、今回は追随値上げをしました。ライバルも労働力不足で悩んでいるため、ヤマト運輸の荷物が流れ込んで来ると困るのです。そして、全社一斉に値上げをしたら、業界全体としては荷物が減らず、従って各社の荷物も減りませんでした。

 これによって各社は「値上げをしても客が減らないから再値上げをしよう」と考えたはずです。加えて、他業界の各社も、宅配便業界と似たような労働力不足に悩んでいるわけですから、他業界でも同じようなことが起きる可能性は十分にあるわけです。

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