赤坂英一の野球丸

2018年6月6日

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 日米がそろってロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平の大活躍に沸き返っている最中、ひとりの日本人メジャーリーガーがひっそりと戦力外通告を受けた。2009年にボストン・レッドソックスに入団し、昨季からマイアミ・マーリンズに移籍したリリーフ投手・田沢純一である。今回は、この両選手の間に隠された〝意外な因縁〟について書いてみたい。

(Ivary/iStock)

 田沢は今年31歳で、大リーグでの通算成績は379試合に登板して21勝26敗4セーブ、防御率4・16。レッドソックス時代には上原浩治(現巨人)と並ぶ二枚看板のリリーバーとして名を馳せ、17年からマーリンズと2年契約を結んだ。が、今季は22試合で1勝1敗、防御率9・00と振るわず、5月17日のロサンゼルス・ドジャース戦で1回3失点を喫した直後、マーリンズが戦力外通告したと発表した。

 昨季限りでイチロー(現シアトル・マリナーズ会長付特別補佐)を解雇したことからもわかるように、現在のマーリンズの経営陣は選手を切ることに躊躇しない。田沢も覚悟はできていたのか、球団を通じて「環境が変われば調子も上がってくると思う」とコメントし、移籍を望んでいることを表明。4日にデトロイト・タイガースとマイナー契約を結ぶことで合意し、当面はマイナーでプレーしながらメジャー復帰を目指すことになる。

 こういうケースの場合、大抵は日本の球団も調査と獲得に乗り出すものだ。今季、巨人が上原を呼び戻したことからもわかるように、力のあるリリーフ投手を必要としている球団は少なくない。黒田博樹、石井一久ら、過去にも古巣に帰って活躍した投手はいる。

 ところが、田沢だけはいますぐ日本の球団と契約できない事情がある。彼が日本のプロ球団を経ず、アマチュアの社会人から直接メジャーリーグへ進んだとき、「米国の球団を退団しても一定期間NPB球団でプレーできない」という申し合わせ事項が作られたからだ。いわゆる「田沢ルール」である。

 田沢は新日本石油ENEOSの主力投手として活躍していた08年、都市対抗野球で全5試合に登板、最速156㎞の速球を武器に1完封を含む4勝をマークした。大会MVPに相当する橋戸賞を受賞し、複数の球団がその年のドラフト1位候補に挙げていた。

 しかし、田沢は日本のプロを経ず、社会人から直接メジャーリーグに進むことを表明。12球団に対し、ドラフトで自分を指名しないよう要請する文書を送付した。

 プロ側が田沢の希望を妨害することはできないが、そうかと言って無条件に認めれば、アマの有望選手が次々にメジャーへ流出する口火になりかねない。そういう強い危機感を持ったプロ側は、日本のドラフトを拒否して海外のプロ球団と契約した選手に対し、一定の制限を設ける申し合わせをした。海外球団との契約が切れたのち、大学・社会人は2年間、高卒選手は3年間、NPB球団と契約できない、というものだ。

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