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2018年6月28日

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加谷珪一 (かや・けいいち)

経済評論家

 東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立。著書に『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)等多数。

 

 フェイスブックの利用者データが不正に流用された事件をきっかけに、大手IT企業による情報収集の是非があらためて議論の的となっている。フェイスブック問題については、最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグ氏が議会証言に立ち、正式に謝罪を表明したことで、とりあえず落ち着きを見せているが、IT企業による利用者情報の取得がなくなったわけではなく、各社はさらに詳細なデータを確保しようと技術開発を進めている。

(DPA/JIJI)

 ネット企業が近年、もっとも力を入れているのが、利用者と音声でやり取りすることができるAI(人工知能)スピーカーである。米グーグルが提供している「グーグルホーム」と米アマゾンが提供している「アマゾンエコー」は、米国を中心に4000万台も普及しており、すでに生活の一部となりつつある。2017年の後半からは、日本語に対応したサービスもスタートしており、徐々にではあるが、日本でもAIスピーカーを利用する人が増えている。

 AIスピーカーは、話しかけると質問に答えてくれたり、音楽をかけてくれるというものだが、アマゾンエコーの場合には、声だけでショッピングすることもできる。また両製品に対応した家電も増えてきており、照明のオンオフなどを声で操作できる。AIスピーカーは、家庭内の執事のようなサービスと考えればよいだろう。

 両社がAIスピーカーの事業に力を入れるのは、自社サービスを利用してもらう頻度をさらに上げたいからだが、それだけが理由ではない。利用者の「声」という生体情報が入手できると、IT企業は途方もない利益を得られる可能性があり、各社はそのビジネスチャンスを狙っているのだ。

 グーグルやアマゾン、フェイスブックといった先端的IT企業が、従来型企業とは比較にならない水準の収益を実現できているのは、AIを使って利用者の属性を徹底的に分析しているからである。

 グーグルとフェイスブックの収益源は広告だが、ネット上の利用者の動きを分析すれば、利用者がどのような人物なのか、かなりの部分まで特定できる。グーグルの場合、どのキーワードを検索したのか、フェイスブックならどのコンテンツを閲覧し、「いいね」のボタンを押したのかという情報を解析することで、利用者の趣味嗜好(しこう)や性格を分析できる。特にフェイスブックの「いいね」がもたらす情報の濃密さは多くの人の想像をはるかに超える。

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