使えない上司・使えない部下

2018年8月9日

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吉田典史 (よしだ・のりふみ)

ジャーナリスト・記者・ライター

ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年から、フリー。
主に、人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。『悶える職場』(光文社)、
震災死』『あの日、「負け組社員」になった…―他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)『封印された震災死』(世界文化社)など。

 今回は、IT企業のダンクソフト(東京都中央区)の代表取締役・星野晃一郎さんを取材した。同社はインターネットサイトやアプリケーションのコンサルティング・制作・構築などを手掛ける。

 1983年創業の会社を創業者の急逝に伴い、エンジニアであった星野さんが継ぎ、特に1990年代後半から、社員とともに働きやすい環境をつくってきた。労働時間の大幅な削減、柔軟な労働時間、副業の許可、在宅勤務、サテライトオフィス、オフィスのペーパーレス化などに取り組んできた。

 進歩的な姿勢が評価され、2014年にダイバーシティ経営企業100選、テレワーク推進賞(優秀賞)、2016年にテレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)、テレワーク先駆者百選、2017年に攻めのIT経営中小企業百選などを受賞した。受賞はこの5年間で、10に達した。

 時代を見抜く星野さんにとって、「使えない上司・使えない部下」とは…。

(metamorworks/Gettyimages)

いいもの、いい仕事をいかにするか。
これこそが、大切でしょう?

 使えない部下…? 結局は、使う側の問題なのではないでしょうか。私は、プロサッカーの阿部勇樹選手(浦和レッズ)が好きなんです。

 阿部選手はディフェンスのちょっと前にいて、全体のゲームメークをする。もっと前のフォワードの下にいて、パスを出すこともできる。フォワードもできるんですよ。ディフェンスも…。ゲームの瞬間、瞬間で、彼がポジションを変えると全体のフォーメーションが変わる。相手にとっては、非常に困るはずです。

 ダンクソフトは、こういう人が欲しい。いろんなポジションをひととおりさせて、駄目だったら「使えねえ」とするのは分かる気がする…。だけど、多様な役割をさせている会社は少ないでしょう。

 働き方改革についていえば、残業をはじめとした労働時間を減らしていくことは必要です。もっと減らしていい。それにともない、労働生産性を上げることももちろん大切です。しかし、目をそこにだけ向けるべきではないでしょう。本来の課題は労働時間を削減し、生産性を上げることではないのです。

 日本の企業を取り巻く環境や市場は、飽和しています。新しい製品やサービスをはじめたところで、なかなか売れない。結局、私たちは今までにないものを創らなきゃいけない。クリエイティビティーが高く、みんなをあっと驚かせるような発想で…。

 そこにたどりつくことができるのは、社員各々の頭の中の作業になります。時間をかけると、斬新な発想が湧いてくるかとはいえばそうではない。それはある瞬間、ぽっと出てくるものです。少なくとも会社が労働時間を厳格に管理したところで、みんなが驚くようなアイデアは思いつかないだろうと思います。ところが、働き方改革では、労働時間削減や労働時間の管理だけが議論されています。その捉え方を逆にしなきゃいけない。

 私は40年程前からエンジニアをしていますが、「斬新なことを考えているのですね」と言われることが時々あります。厳密に言うと、エンジニアの仕事は実は単純作業が多い。実際は、ほぼルーティンワーク。本当の意味で、クリエイティビティーを求められるのは、トラブルでうまく動かないときなどです。そのとき、日々のルーティンワークがモノを言うんです。毎日、きちんと同じことを繰り返して、ルーティンワークを突き詰めることで直感力が働く。

 プログラムは、単純作業で本当につまらないんですよ…(苦笑)。全作業の90%ぐらいはつまらない。でも、ある瞬間にひらめきがあり、やり方を変えると、作業が相当に速くなる。そのために、日々つまらないことの繰り返しをする。私は、そのように思っているのです。「労働時間を短くすればいい」というほど単純なものではない。逆ですよね…。いいもの、いい仕事をいかにするか。これこそが、大切でしょう?

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