使えない上司・使えない部下

2018年6月1日

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吉田典史 (よしだ・のりふみ)

ジャーナリスト・記者・ライター

ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年から、フリー。
主に、人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。『悶える職場』(光文社)、
震災死』『あの日、「負け組社員」になった…―他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)『封印された震災死』(世界文化社)など。

 今回は、ベンチャー企業の執行役員の男性(48歳)を取材した。1990年代前半に広告制作会社に制作ディレクターとして勤務し、600社ほどのベンチャー企業を取材し、広告などを制作する。

 1990年代後半に中途採用で広告系のベンチャー企業に就職し、30代前半で執行役員本部長になる。同社が株式上場した数年後に退職し、42歳で現在のIT系ベンチャー企業に転職する。

 現在は、他の企業への投資を得意とする社長の側近として、多数のベンチャー企業の社長、役員と接点を持つ。前職の広告系のベンチャー企業在籍時から現在までに、1500人以上のベンチャー企業の社長とビジネスの関りを持った。

 ベンチャー企業の断面を知り尽くす執行役員の男性にとって、「使えない上司・使えない部下」とは…。

(Wavebreakmedia Ltd/iStock)

Q. ベンチャー企業と言えば、私の周りでは、この4年で15件ほどのベンチャー企業がほかのベンチャー企業などに売却をしています。このような動きをどう感じられますか?

 最近は、あっさりとバイアウト(企業売却)するベンチャー企業が目立つね。それがある意味、賢いよ。ベンチャーを起業する人はいずれ、株式上場か、その前の段階でバイアウトを考える場合が多い。実現すれば、創業者で大株主ならば、数億円から数十億円を手にするわけだから。生涯において、「上がり」だよね。

 買う側の環境も変わってきている。時代の動きや市場の変化が激しい。時間をかけて、じっくりと新規事業を…ではベンチャーに大きなリスクだから…。だったら、数億円~数十億円を出して、その会社を買うほうがはるかに安上がりで、安全。その会社の得意先、営業先や販売先、お客さん、信用、ブランド、知名度、ノウハウ、社員…。これらをみんな一括ですぐに買えるんだから、数十億円だって安いのかもしれない。

 売れるときに売っちゃえ、買えるときに買っちゃえ、的なノリなんじゃない? 私も、かつて勤務したベンチャーの創業メンバーのときに、そういう思いだった。あそこは、上場した。当時30代の役員は、デカい家を都内に建てたからね。その後は、廃人みたいな40代になったけど。

Q. なぜ、バイアウトする会社が増えているのだと思われますか?

 メガベンチャーはともかく、普通のベンチャーで優秀な人材を獲得することは難しい。定着率も悪い。事業の先行きも、クリアには見えない。それならば、売っちゃえばいいじゃん…という感覚が、あるときから信念になるのだろうね。 今は「働き方改革」なんて言われ、労働時間の規制や労働法の順守を強く求められる。経営基盤の脆弱なベンチャーには、ハンディですよ。今後、2020年以降、日本経済はどんどんとシュリンクしていく。こんな時代に、創業者としていつまでも経営するのは危うい。

 そのような創業者は上場したところで、時価総額はもう増えない、つまり、市場での価値がなかなか認められないと見抜いていたんだと思う。言い換えると、事業のバリエーションがない。多角化しようとしても、それぞれのシナジーもつくれない。創業者としてのある種のゆきづまりを感じていたんじゃないかな。

 そこまでして上場を狙ったところで、得るものはある意味、名誉欲を満たすことができるくらいだから。だから、バイアウトして上がり! と考える創業者は賢いんですよ。私の知人で、IT系のあるサービスに特化した会社の創業者がいた。創業10年くらいで、売上が9億円前後、正社員数が60人ほどのときにバイアウトした。本人から聞いたけど、このビジネスでは上場させたところで、事業として広がりがないと察知したらしい。実際に売上7億円からは伸び悩んでいた。いわゆる、「10億円の壁」ね。

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