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2018年8月14日

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小泉悠 (こいずみ・ゆう)

財団法人未来工学研究所特別研究員

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に軍事大国ロシア』(作品社)、『プーチンの国家戦略』(東京道堂出版)『ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

頻繁に会談を重ねるネタニヤフ首相とプーチン大統領(REUTERS/AFLO)

ロシアにとっての新たな中東問題

 2015年9月にロシアがシリア紛争に介入してから、まもなく丸3年が経とうとしている。この間、ロシアは空軍、特殊部隊、軍事顧問団をシリアに送り込み、合わせて大量の軍事援助を行うことでシリアのアサド政権を支え続けてきた。これによってアサド政権は不完全ながらも支配領域を回復し、もはや同政権を軍事的に打倒することは極めて困難な状況になりつつある。この意味では、ロシアの戦略目標はほぼ成功したと考えられよう。

 しかし、ここに来て、ロシアにとって頭の痛い新たな問題が浮上しつつある。ロシアと並んでアサド政権を支えてきたイランの軍事プレゼンスがシリア全体に広がり、これを懸念するイスラエルとの間で一触即発の状況が生まれつつあることがそれだ。イランとの核合意をまとめたオバマ政権とは異なり、新たに誕生したトランプ政権がイランに対して強硬な姿勢を取っていることもそこに拍車を掛けている。

 このような状況下において、ロシアがイスラエルとイランの調停者としての役割を果たす場面が目立ってきた。米国が中東への関与を後退させる中にあって、中東におけるロシアの存在感はことさら増大しつつある。

 では、ロシアは米国に代わる新たな「中東の警察官」になるのだろうか? そもそも、そのような能力と意志はロシアに備わっているのだろうか。小欄では、これらの問題について二回に分けて考えてみたい。

ネタニヤフのモスクワ詣で

 ロシアでは、5月9日は戦勝記念日とされている。1945年のこの日、ナチス・ドイツがベルリンに突入したソ連軍に降伏したことを記念するものだ。

 戦勝記念日にはロシア各地で軍事パレードが開催されるが、中でも大規模なのは首都モスクワでのパレードである。ロシア軍の最新兵器が赤の広場を行進し、プーチン大統領が従軍経験者を讃える演説を行う。外国からのゲストも招かれるが、2014年以降、西側諸国の首脳は概ねボイコットしており、近年ではロシアの友好国首脳が主なゲストとなっている。

 今年の戦勝記念パレードについて言えば、イスラエルのネタニヤフ首相が参加したのが目についた。イスラエルはロシアとの関係も深いが、米国の友好国でもあることから、ウクライナ危機以降は戦勝記念パレードに首脳を派遣してこなかった。また、パレード中の席次もプーチン大統領からひとつ離れた席とされ、いわゆる主賓扱いではなかった。2015年のメイン・ゲストだった中国の習近平主席が夫人とともにプーチン大統領のすぐ隣に席を占めたことを考えると、外国首脳に対しては若干奇異な待遇であったと言える。

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