2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年9月5日

 8月16日、米国国防総省は、議会に提出した「中国の軍事及び安全保障の動向に関する年次報告書」を公表した。全文は130頁に及ぶ報告書であるが、その要約が、冒頭3頁に掲げられている。その主要点を紹介する。

(UmbertoPantalone/billcourtney42/lowgraph/iStock)

中国の戦略とは何か

 2002年以来、習近平を含む中国の指導者達は、21世紀の最初の20年間を「戦略的好機の時代」と位置付けた。この時期の国際環境により、中国は、国内の発展と「包括的国力」の拡大がしやすくなると見た。中国共産党は、これらの目標を、習近平の言う「中国の夢」として、強く繁栄した中国の建設を目指す。

増大する地域的、世界的存在感

 中国の指導者達は、増大する中国の経済的、外交的及び軍事的影響力を行使して、地域的、世界的地位を高めている。「一帯一路」、現在では「帯路構想(BRI)」と名前を変更しているが、これは他国との経済的絆を強化し、他国の利益を中国の利益と同等に形作ってしまおうというものである。BRI参加国は、中国資本への依存を強めることになろう。例えば、2017年7月、スリランカと中国の国営企業(SOE)は、ハムバントータ港の99年間のリース計画に合意した。同じようなことは、ギリシャのピレウス港や豪州のダーウィンでも起きている。

地域の対立を管理する包括的アプローチ

 中国は、自らの利益を増進し、他国の反対を軽減するために、軍事的、非軍事的な強圧的手段を使用する。例えば、2017年には、中国は、韓国がTHAADの導入を見直すよう、経済的、外交的圧力をかけてきた。地域の領土や海洋の対立に関しては、中国は、スプラトリー諸島に、前哨基地を建設し続けている。尖閣諸島では、海警のプレゼンスが常態化している。2017年6月、インドは、ブータンと国境を接する係争地帯で中国が道路を拡張するのを、70日以上の膠着状態の後、止めさせた。8月、インドと中国は兵力の撤退に合意したが、両国は、引き続き周辺地域に軍事的プレゼンスを維持している。


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