田部康喜のTV読本

2018年9月6日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

今期ドラマのトップクラスの作品

 #5(8月24日)は、依頼者の天利聡史(朝比奈秀樹)が交通事故で意識不明の状態となる。死亡確認に出向いた祐太郎(菅田)は聡史の小学校時代の友人を装って、依頼者の婚約者を名乗る楠瀬百合子(橋本愛)と出会う。百合子は、聡史の入院先で母から見せられた彼のクレジットカードの引き落とし明細書をみてdele社をみつけて、祐太郎の素性を見破る。しかも、百合子も聡史と同じ小学校の出身で祐太郎を疑っていた。

 百合子は、それを隠しながら祐太郎を誘って、聡史との思い出の場所を巡って歩くのだった。カフェやバッティングセンター、公園を。

百合子 「聡史が亡くなったら、この世界はどうなってしまうんだろう」

祐太郎 「何人も大切な人がいたはずなのに、なにも変わらない。世界は昨日と同じ顔をしている」

 依頼者の聡史とは、夜の公園でよく会ったと百合子はいう。仕事の愚痴をお互いに話したりしながら。幼馴染と友人という境目を超えることは、なかったという。そんな聡史の気を引こうとして恋人を作ってもみたが、反応はなかった。

 会社の先輩から真剣な付き合いを求められて、聡史の気持ちを最後に確認する機会にしようと彼に告げた。

百合子 「そしたら、ぎゅっと抱きしめてくれた。涙がでるほどうれしかった。でも耳元で『こんどはがんばれよ』って。遅いよ、馬鹿野郎」

 祐太郎がdele社の人間であることを見破っていたことを、百合子は告げて、聡史の削除依頼をキャンセルする、という。自分の知らない彼の実態を知りたいというのである。祐太郎から連絡を受けた圭司(山田)は、本人の意思ではないので拒否する。

 一方、祐太郎は聡史の親友である宮田翔(渡辺大知)と会って、百合子が実は婚約者ではないことを知る。

 聡史の母からの知らせで、祐太郎と百合子、宮田が病院に駆けつける。聡史は意識を取り戻した。聡史の手が求めたのは、すがりつく百合子ではなく、宮田の手だった。百合子は泣きそうな表情を浮かべながら、すべてを悟る。

百合子 「遅いよ。馬鹿野郎」

 祐太郎もまた、冷静な視線を注ぎながら、聡史が削除を依頼した秘密の情報が何なのかを推測できた。

 圭司(山田)に祐太郎はいう。「あのまま死んじゃって、データを削除しちゃったら、ちょっとこわいね。大体想像できるけど、愛の証(あかし)では。俺たちは愛の証を消すために仕事をしているんじゃないよね」と。

 ドラマはシリーズの初めは、データを削除するまでの過程を描いていた。中盤に至って、削除しない理由のなかにも依頼者の人生を読み取っていく。#6(8月31日)は雪原で自殺した女子高校生の依頼人の秘密情報を追ううちに、SNSを使って自殺願望のある高校生に接触して、洗脳して実際に自殺に追い込むネットの男の犯罪者に行き着いた。この男を待ち伏せして、車いすに乗ったままで倒す圭司(山田)のアクションは見応えがあった。

 一話ごとに、依頼人のさまざまな人生模様が、山田孝之と菅田将暉のセリフによって浮き彫りにされていく。今期ドラマのトップクラスの作品である。
 

  
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