2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年10月15日

  この報告書は欧州議会で、賛成530、反対53、棄権55の圧倒的多数で採択されたという。一読して分かる通り、驚くほど直截的な中国への警戒感と批判の表明である。欧州においても、中国の影響力の増大、それが自由、人権、法の支配、公正な競争などと言った西側が立脚してきた価値を損ね得ることを的確に認識しつつあることの証左であると言えるだろう。オランダ出身の欧州議会議員バス・ベルダー氏は「EUと中国との強固な関係の原則は、市場アクセスから報道の自由に至るあらゆる分野における相互主義である。相互主義が相互信頼を強化し、EUと中国との間の強固な戦略的パートナーシップを作ることになる」と述べている。

 報告書では、台湾についても以下のような注目すべき記述がある。欧州において台湾に対する関心も高まっていることが分かる。

・一方に権威主義を強める一党独裁国家、もう一方に多党の民主国家が存在することは、両岸関係のエスカレーションを高める危険がある。

・2015年の対中関係報告書ではEUと台湾との2国間投資協定の交渉開始を求めているが、遺憾なことにまだ始まっていない。

・EUと加盟国は、中国の台湾に対する軍事的挑発をやめるよう最大限求めるべきだ。両岸のあらゆる紛争は国際法に則り解決されるべきだ。中国が台湾海峡上空で新たな航空ルートを一方的に開始する決定をしたことに懸念を表明する。中台間の公式対話の復活を勧奨。台湾のWHO,ICAO(国際民間航空機関)等の国際機関への参加を支持し続ける。台湾が国際機関から排除されることはEUの利益にならない。

 台湾は最近、考え方を同じくする国々が連帯して中国に対抗することを外交政策の基本に据えている。欧州の上記のような姿勢は、台湾にとっても心強いであろうし(台湾政府は欧州議会に感謝を表明している)、民主主義陣営全体にとってもプラスとなろう。
 

  
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