世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年10月22日

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 報告書は、既存の世界秩序や共通の価値観を積極的に支持しないトランプ政権のやりかたを非難する一方、軍事的ライバル、とりわけ中国を念頭に対抗すべしとする点では、トランプ政権と問題意識と同じくしている。むしろ、台頭する中国への対抗は、歴代アーミテージ・ナイ報告書の中心テーマであったと言うべきであろう。報告書の具体的提言を見てみると、日米同盟を通じて、台頭する中国に対抗するという考えは、より明確になる。報告書は、軍事面では、次のような提言をしている。

・日米による基地共同運用。

・日米共同統合任務部隊の創設(これは、台湾、南シナ海、東シナ海をめぐる中国との不測の事態への備えとなり得る)。

・自衛隊の統合司令部の創設。

・共同作戦計画の策定。

・防衛装備品の共同開発。

・ハイテク分野における協力の拡大(長期的には、日本をファイブ・アイズ(米、英、豪、カナダ、ニュージーランド)の諜報ネットワークに組み込む)。

 報告書は、日米同盟の負担の分担についても重要な指摘をしている。日本が、自らの防衛支出に加え、駐留米軍の経費の約75%を負担していること、米軍再編への多額の拠出などを挙げ、日本の貢献を軽視すべきでないとする一方、日本が次期中期防、防衛大綱で防衛支出を増額することが重要である、と言っている。報告書は「中国の軍事的能力の向上、北朝鮮の核・ミサイルの脅威を受け、日本の防衛費はGDP比1%を超える必要があるだろう」としている。負担の分担を増やすべしというのは、トランプ政権の主張と同じである。そして、これは日本が置かれている安全保障環境を考えれば、理にかなってもいる。

 トランプ政権が国際秩序をどう考えているのかは、もとより重要な問題である。トランプ大統領に、そうした面で望ましい言動を期待するのは困難であるかもしれない。ただ、日本および日米同盟を取り巻く安全保障環境、地政学的環境に注目すれば、最近喧伝されるようになった「米中新冷戦」を軸にしたものとなり、その中で日本としても自助努力が一層求められるという構図になることは間違いないと思われる。
 

  
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