2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年10月22日

 10月3日、アーミテージ元米国務副長官とナイ元国防次官補が中心となり、米国の超党派の外交・安全保障問題の研究者グループが‘More Important than Ever - Renewing the U.S.-Japan Alliance for the 21st Century’と題する、日米同盟強化を求める報告書を発表した。いわゆる「アーミテージ・ナイ報告書」の第4弾に当たる(1回目は2000年、2回目は2007年、3回目は2012年)。

 報告書は、日米同盟をNATOと並んで世界で最も重要な同盟であると位置づける一方、トランプ政権の言動により日米同盟の先行きについての不透明感が増していることに警鐘を鳴らしつつ、日米同盟の強化に向けた提言をしている。米国の外交安保政策のエスタブリシュメントの最大公約数的な見方として、価値があると思われる。今回は、報告書の中から、特に安全保障に関連する内容を中心に紹介する。

(NUMAX3D/eldadcarin/iStock)

 報告書は、日米同盟が直面する深刻なチャレンジを以下の通り4つ指摘する。

第1:日米が支持してきた国際秩序が危機に瀕している。強権的資本主義が拡散する一方、米国の指導者は同盟の価値や既存の世界秩序に疑問を呈している。

第2:日米の指導者は共有する価値観について、もはや歩調を揃えて語っていない。トランプ政権の同盟国に対する取引的アプローチ、強権的指導者への無条件の関与は、人権、民主主義、自由市場と自由貿易、法の支配を含む共通の価値を米国が支持しているとの見方を弱めている。

第3:保護主義が蔓延、中国は不公正な経済的慣行により米日のイノベーションを出し抜こうとし、トランプはポピュリスト的感情を利用して有害な保護主義政策を進めている。

第4:軍事的競争相手は日米同盟の軍事的優位を縮小させている。特に、中国は、軍の急速な近代化を図り、グレー・ゾーン作戦(軍事か非軍事か明確に分類できないような作戦)を進めている。


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