チャイナ・ウォッチャーの視点

2018年10月23日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

(写真:AP/アフロ)

 2018年10月7日、ポンペオ米国務長官が訪朝し、金正恩委員長と会談した。第2回米朝首脳会談の時期および内容等について協議したものと思われる。しかし、北朝鮮の非核化に関して実効性のある合意を得ることは難しかっただろう。

 米朝両国は、朝鮮半島の非核化と朝鮮戦争の終結を進めることについて合意しているが、米国はまず北朝鮮が完全な非核化を進めるべきだと主張し、北朝鮮は寧辺の核施設の閉鎖とロケット・エンジン試験場の破壊と引き換えに朝鮮戦争の終結を宣言するよう要求している。全く逆のプロセスを要求する両国の溝は深い。

段階的な非核化と制裁緩和を主張する中ロ

 米国は、自らが追求する理想的な結果が実現しないことを思い知りつつある。米国だけではない。日本を含む国際社会も、間もなくその不都合な現実を認識せざるを得なくなる。しかし、その現実を知った時、国際社会は、北朝鮮を非核化に向かわせるための圧力を、改めてかけることができるだろうか? 北朝鮮の非核化が進むという誤った期待感は、北朝鮮対応に影響を及ぼしかねない。

 2018年6月12日に開かれたシンガポールでの米朝首脳会談の後、日本を始めとする国際社会の中にも、北朝鮮が進展するという期待感が高まってしまった。トランプ大統領が金正恩委員長に親近感を示しており、それに合わせるかのように周辺諸国も期待を示し、北朝鮮に対する警戒感が緩んだのである。

 国際社会の警戒感が緩んだ機に乗じて、中国やロシアが、朝鮮半島の段階的な非核化と北朝鮮に対する制裁の緩和を公に主張し始めている。しかし、中国自身の警戒が解けた訳ではなさそうだ。トランプ大統領が、金正恩委員長に騙されたとして軍事力を行使する可能性を除いても、北朝鮮社会が不安定化する原因はいくつも考えらえる。

 例えば、自然災害である。台風や地震などによって北朝鮮国内に甚大な被害が出れば、ただでさえ経済制裁で苦しい状況にある北朝鮮経済はさらに悪化する。北朝鮮国民が飢餓に苦しむ状況は、北朝鮮社会の不安定化を招くとともに、国境を越えて中国に避難しようとする大量の避難民を生むだろう。

 さらに、北朝鮮軍の一部が社会の不安定化に乗じて反乱を起こす可能性もある。北朝鮮は経済的に苦しい状況にはないという分析も聞くが、軍の中にも食糧不足の兆候は見られる。食べられなくなれば暴動が起こる。軍内の暴動は他の部隊によって制圧が試みられると考えられることから、北朝鮮国内で内戦が起き、社会はより不安定化するだろう。

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