Washington Files

2018年12月10日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 今世紀に入りユダヤ人、黒人、イスラム教徒などに対する白人過激グループによる暴力やテロがアメリカで急増しつつある。だが、州警察やFBI(連邦捜局)による白人を対象とした摘発、捜査は後手に回り、主要メディアの厳しい批判の的になっている。

 アメリカ大都市での犯罪といえば、前世期までは「黒人」に原因が着せられることが大半だった。とくに筆者が米国留学中だった1960年代以降、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、デトロイト、アトランタ、ボストンなどの主要都市では、連日のように黒人暴動、商店焼き討ち、白人襲撃・レイブ事件などのニュースがテレビ、新聞で大々的に報じられ、犯行に及んだ黒人たちの検挙があいついだ。全米でも最大規模の終身刑刑務所として知られるサンフランシスコ郊外の「サンクエンティン・プリズン」を見学したことがあったが、服務者の8割近くが黒人だったことに衝撃を受けた記憶がある。

11月、レイシストによる銃乱射の現場となった米ピッツバーグユダヤ教礼拝所(AP/AFLO)

 ところが、21世紀に入り、「黒人暴動」のニュースを茶の間のテレビ画面で見ることは皆無に近い状態となった。

 事実、FBI調査データ「Uniform Crime Reporting Program」によると、たとえば2008年の殺人件数は、ミネアポリスで67%、シアトルで47%、ニューヨークで31%、ロサンゼルスで17%とそれぞれ顕著な減少となり、とくに黒人街での発生件数の激減ぶりが目立った。

 その後も減少傾向が続いている。

 1960年代のピーク時には凶弾に倒れたニューヨークの犠牲者は毎年2000人以上だったが、2014年には328人となり、その後さらに減ってきている。ワシントンDC、フィラデルフィア、ピッツバーグなどの黒人人口が大半を占める他の都市でも同様だ。

 このような黒人凶悪犯罪の減少理由については(1)警察当局による取り締まり体制が強化されてきた(2)着実な経済成長により雇用機会が拡大した(3)黒人社会における自己啓発意欲・社会意識の向上―などが指摘されている。

「プアホワイト」

 これと対照的なのが、白人犯罪だ。とくに「プア・ホワイト」(白人貧困層)過激グループによるユダヤ人、黒人、ヒスパニックなどに対する憎悪をむき出しにした“ヘイト・クライム”が今世紀初頭から急増し始めている。

 毎年、世界中で発生するテロ事件の追跡調査組織として定評のある米メリーランド大学「グローバル・テロリズム・データベース」によると、昨年1年間に世界中で起きたテロ件数は1万1000件で2014年と比較して7000件程度減少した。しかし、米国では増加の一途をたどっており、10年前には6件に過ぎなかったテロが、昨年には65件にも達した。犠牲者数も増加している。

 そして65件のうち、37件が白人過激グループによるもので、残りは11件が左翼過激派、7件がイスラム過激組織、その他となっている。

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