韓国の「読み方」

2018年12月11日

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伊藤弘太郎 (いとう・こうたろう)

キヤノングローバル戦略研究所研究員

2001年中央大学総合政策学部卒業、04年同大学大学院総合政策研究科博士前期課程修了、17年同大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。衆議院議員事務所、公益財団法人日本国際交流センター等での勤務を経て、15年1月より内閣官房国家安全保障局にて、参事官補佐として韓国を中心とする東アジア地域の政策実務に携わった後、17年7月より現職。専門は韓国の外交安全保障政策。

文在寅大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

最悪のタイミングでの「竹島訪問」

 筆者は11月26日から29日までソウルに滞在し、現地での最新情報収集のため外交安保の専門家やメディア関係者などにインタビューを行った。中でも到着早々26日午後に面会したシニアの外交専門家とのやり取りが最も興味深かったのでご紹介する。

 面会前に最新ニュースをチェックすると、日本のニュースサイトでは「韓国国会議員団竹島訪問」という記事があふれていた。記事を確認した時点では、同日午前の議員団による竹島訪問に対し、日本の外務省は外交ルートを通じ韓国側に対する抗議をすでに終えている状況であった。当然ながら筆者はこの事件が韓国メディアでも報道されているものと思い込み、面会先に到着後、挨拶を済ませて開口一番、「今日午前に韓国の国会議員団が竹島を訪問したようですね。なぜこの時期に竹島に訪問するのでしょうか?」と質問をぶつけた。すると、相手は驚いた表情で「(竹島訪問は)本当なのか?そんな報道は確認していない。(筆者が関連記事を見せると)今週の判決(徴用工裁判)があるのに、なぜ今この最悪のタイミングで訪問する必要があるのだろうか?」と言いながら筆者の前でうなだれていた。同席していた別の韓国人研究者も同島訪問の事実をそこで初めて知ったらしく、韓国メディアの速報は明らかに日本よりも遅かったようだ。

 結局、竹島訪問のニュースは、韓国では当日夜でもトップで扱われることなく、政治ニュースの一つとして報道されていた。この訪問がどの程度一般韓国国民に対する政治的アピールとなったかは疑問だ。恐らく効果は乏しかったに違いない。有力野党議員が団長を務めた今回の訪問は、韓国政界が与野党問わず、日韓関係の改善に関心がなく、むしろ、さらなる関係悪化に向け火に油を注ぐ結果に終わったようだ。

 今回の滞在期間中、現在の日韓関係については、もうこれ以上悪化することを避けたいという雰囲気を韓国の各所で感じることもできた。例えば、個別面会や会合を通じて知り合った研究者やメディア関係者に対し、「現政権はなぜそこまで日本との関係が悪くなることを許容するのか」、「対日政策はどう考えて決めているのか」などと質問をぶつけても、彼らは一様に困った顔をしていた。政権が何を意図して対日政策をコントロールしているのか、うまく説明できる答えを持ち合わせていないだけでなく、彼ら自身も日韓関係で悪循環が続く現状に対し疑問を持っているからだと感じた。ただし、有識者の間で表立って現政権を批判することができないという雰囲気は、政権発足当初から変わっていないようだ。

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