WEDGE REPORT

2018年12月14日

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朴承珉 (パク・スンミン)

在韓ジャーナリスト

在ソウルジャーナリスト。元・時事通信ソウル支局記者。文藝春秋・週刊文春ソウル特派員。長年、北朝鮮問題をウオッチ、平壌、開城工業団地、板門店、金剛山など7回以上北朝鮮の地に入って取材。日本の新聞、テレビ、雑誌などに寄稿・解説。韓国の新聞などに寄稿している。

 先月24日、ソウル市内のKT(通信会社)阿峴支社の地下通信溝で火災が発生した。火災で、中区、竜山区、西大門区、麻浦区の一帯と恩平区、京畿道高陽市の一部地域の都市機能の相当の部分が止まってしまった。ソウル警察庁管轄の4つの警察署の通信網が断たれ、110番システムもまともに稼動できなかった。

(REUTERS/AFLO)

 同地域ではKTが提供する市民らの携帯電話、有線電話、超高速インターネット、IPTVサービスはもちろん、飲食店などすべての店のカード決済まで中断した。平日だったら金融サービスがオールストップするなど、さらに大きな混乱が起きそうになった。その周辺の病院ではKTインターネットを基盤とする電算網が一時的に停止する状況が発生したりした。

 火事の鎮圧に10時間もかかった。週末の当直勤務職員2人がきちんと対応するには当初から容易ではなかった。今回の火事が発生した通信溝には、有線電話16万8000回線と光ケーブル220セットが通っていた。火災が招く莫大な被害の可能性にもかかわらず、スプリンクラーや火災警報機など火災防止施設が整えられないまま、たった消火器1台だけが置かれていたという点がショックを与えた。

 KTの利用者はあっという間に“過去”に戻ったといった。一部では“石器時代”に戻ったという比喩までするほど衝撃は大きかったようだ。公衆電話に列を作る珍しい光景が展開された。単に管轄地域のKT利用者の不便だけではない。日常の不便を超え、経済、社会、安保など韓国社会の基盤が脅かされ、崩壊することもあり得るという可能性を考えさせた。

 火災で、現場付近の人々の人命被害は発生しなかったが、25日午前5時ごろ心臓に痛みを訴えていた麻浦区の市民が、電話が通じず、適時に救急車を呼ぶことができず、死亡した事故が発生した。

 KTは、皮肉にも災難発生当日の24日、「12月1日から第5世代(5G)移動通信が始まる」というテレビ広告を流しており、企業のイメージに大きな打撃を受けざるを得なかった。

 KTは、“韓国通信”という社名の公企業だったが、02年に民営化された。国民生活に大きな影響を与えることからすると、代表的な民営化事例に挙げられるのがKTだ。政府は1987年から韓国電気通信公社の売却に乗り出し、02年に全量を売却した。

民営化で6万から2.3万に削減

 02年に民営化過程を経たKTは、約6万人に達した正規職の従業員をリストラを通じて17年末の基準で2万3420人に減らした。この過程で必要な人材は、非正規職の下請け会社の従業員に取って代わった。安全管理を担当するケーブル・マネージャーチームが大幅に減らされた。コスト削減のため、外注化やリストラを経て、日常的な安全管理はもとより、事故の対処まで外部の会社に任せ、迅速な対応を見逃す問題が後を絶たない。

 阿峴支社のように事故発生時に莫大な被害を与える可能性が高い施設は、KTが自主的にバックアップシステムを構築しなければならなかったが、費用のため、これを無視したのだ。これらの以前からKTを再び公共化すべきだという主張が出ている。重複投資、マーケティング費用の増加、そして海外資本に対する高配当に国富が流出し、国民の通信費負担が増えているという理由からだ。このようにKTの経営方式に対する指摘が相次いでいる。

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