中東を読み解く

2019年1月19日

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 シリアで1月16日、駐留米軍を狙った自爆テロが発生、兵士2人を含む米国人4人など19人が死亡した。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出し、いつでもテロを仕掛けることができる余力を示した。ISは将来的に生き残るため、現金や金塊といった資金を砂漠の地中などに隠匿しているとされ、米軍撤退が迫る中、完全な壊滅が困難であることが浮き彫りになった。

16日テロ現場となったシリア北部の都市マンビジュ(AFPTV/AFLO)

二つの事実を示す

 自爆テロが起きたのはシリア北部の要衝マンビジュ。同地はトルコ国境の南約40キロ、大河ユーフラテス川の西側に位置するクルド人支配地域にある。ISが2014年に占領したが、米軍の支援を受けたクルド人武装勢力が2年後に奪回した。

 しかし、クルド人の勢力伸長を恐れるトルコが侵攻の構えを見せたため、同地に基地を持つ米軍が仲介に入り、クルド人戦闘員を撤退させ、現在は米軍とトルコ軍が合同パトロールを実施している。だが、米軍のシリア撤退方針が発表された後、シリア政府軍がクルド人の招きでマンビジュの一角に入るなど各派入り乱れる複雑な様相を呈している。

 こうした中、今回のテロが起きた。混雑していた地元のレストランの前で男が自爆ベストを爆破させたという。米中央軍の発表によると、死亡した4人の他、米国人3人がけがをした。事件の後、一部の米国人は米軍ヘリで現場から運ばれた。

 米国人が被害にあったシリアでのテロとしてはトランプ政権下で最大だ。事件直後、ISの宣伝機関であるアマク通信が犯行声明を出した。ISが実行犯かどうか確定的ではないが、「今回のテロで明確になったことが2つある」とベイルートの対テロ専門家は指摘する。

 一つはトランプ大統領の「ISは壊滅した」という主張とは裏腹に、ISがなおテロをいつでも起こす力を残している、ということだ。「ISが全く死んでいないことがあらためて明らかになった」(同専門家)わけである。

 もう一つはISのネットワークの広がりである。ISは現在、数百人規模の残党勢力がシリア東部の国境の町ハジン周辺に立てこもり、クルド人主力の民兵軍団と交戦している。しかし、ハジンからテロ現場のマンビジュまでは約400キロも離れており、ハジン地域のIS戦闘員がクルド人勢力の包囲網をかいくぐってマンビジュまで出向いてテロを起こしたとは考えられない。

 「陥落した首都ラッカから逃亡した戦闘員がシリア全土に拡散し、ISネットワークが作られている」(同専門家)という方が自然だろう。ISの休眠細胞として、戦闘員が全土に潜伏、指令一つでスイッチが入るのだ。

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