迷走する日本の「働き方改革」への処方箋

2019年2月10日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

 人間の能力差を認めようとしない、人間平等主義に根ざした日本社会は現今の世界において歪んでいるように見える(参照:「同一労働同一賃金」が格差を生むワケ)。能力差といえば、先天的格差といっても通じる。生来頭が良くて勉強のできる子とそうではない子、果たして公平といえるのだろうか。人間だけではない。国もそうである。先天的に資源に恵まれている国とそうではない国は、その後天的な経済発展に至ってどのような影響があるのか。私はこの課題を抱えてブルネイや中東(クウェート、バーレーン、UAEなど)、ノルウェーといった産油国を視察する旅に出た。

1億円もする世界一のシャンデリア

 ブルネイ王国は、周知の通り世界でも有数の富裕国である。妙なことに、世の中の富裕国は極端に天然資源の豊富な国もあれば、極端に天然資源の貧弱な国もある。前者は、ブルネイや中東湾岸・アラブ諸国ないしノルウェー(北海油田)のような、豊富な原油と天然ガスの資源を有している国々である。後者は、シンガポールやスイス、ルクセンブルクのような、ほとんど天然資源を有しておらず、独自の産業育成を中核とする国家戦略の成功によって富を手に入れた資源貧弱国(多くは都市国家に近い小国)である。

 ブルネイ視察(2015年5月)。1億円もする世界一のシャンデリアを一目見たくて、伝説の7ツ星ホテル、エンパイア・ホテル&カントリークラブに投宿する。

1億円もする世界一のシャンデリア(写真:筆者提供) 写真を拡大

 ロビーに一歩踏み入れると、圧巻。金、金、金、大理石、大理石、大理石…、そして紺碧の海を眼下に納める巨大なアトリウム。エンパイアは王宮の迎賓館として2000年のアセアン会議に合わせて建てられた宮殿級のホテル。まさに国力の誇示であり、世界トップクラスの金持ち小国・ブルネイの縮写でもある。

エンパイア・ホテル&カントリークラブ(写真:筆者提供) 写真を拡大

 ホテルはとにかく大きい。日本人から見ればなんでここまで無駄なスペースを設けるのか、というくらいに空間が大きい。廊下もエレベータホールも信じられないほどに広い。誰も座らないのに、あちこち高級そうなソファが配置されている。一般の客室の天井がここまで高いのも初めて見た。それに大きなバルコニー、これも「く」の字になっていてミニパーティーができるほどの広さ。もちろん、海一望。

 三重県と同じ大きさの国土。ブルネイの豊かさを支えているのは石油と天然ガス資源である。働かなくても石油が湧き出る限り、暮らしていける。いや、贅沢に暮らしていけるのだ。まるで代々資産家の豪族資本家とサラリーマンの勤労家庭、資源国と非資源国、生れつきのこの先天的格差。公平といえるのだろうか。気がつくと、内心に芽生える妬みの感情を一生懸命抑えようとする自分がそこにあった。

 資源の乏しい我が日本。資源のために戦争を起こしたといっても過言ではない。もし日本がブルネイのような資源国だったらどうなっていたのだろう。なんてことはありえないし、考える意味もない。

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