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2019年2月24日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

(Tanaonte/gettyimages)

 英国が欧州連合(EU)からの離脱を通知してから2年経つ交渉期限が3月29日に迫る中、ジェトロはこの問題の最新情勢についてロンドンとブラッセルからの現地報告に基づくセミナーを22日に開催した。

 井上博雄ブラッセル事務所長は「英国とEUの交渉は相互不信に陥り、危機的状況にある。期限までに合意できる可能性は小さく、現地の日系企業は『合意なき離脱』により生ずるリスクに備えるべきだ」との見方を明らかにした。

 また中原廣道ロンドン産業調査員は「英国とEUの交渉は北アイルランドの国境管理問題(バックストップ)で対立し、先行きの不透明感が強まっている。英国は『合意な離脱』になった場合に備えるガイダンスも公表、物流、通関、金融分野などへの影響が心配されている。英国側だけでなくドイツやフランスなどEU側も雇用面の影響を警戒、ドイツのハレ経済研究所は『合意なき離脱』が起きると、ドイツで約10万3000人、フランスで約5万人を含む世界全体で約60万人が失職する恐れがあると公表している」と指摘した。

多い不確定要因

 ブレグジットをめぐっては、1月15日に英国下院がメイ首相の提案した離脱協定案を大差で否決した。29日には下院が協定案についての新方針を採決した。しかし、メイ首相が率いる保守党や最大野党の労働党の双方から離反者が出て中道グループを結成するなど、首相を取り巻く政治情勢は厳しさを増している。

 「合意ある離脱」にするためには、離脱協定案を欧州議会で審議し同意の手続きが必要なほか、EU27カ国審議、EU理事会での承認手続きが必要で、これらの合意を取り付けるのは簡単ではないとみられている。もともと、EU側は英国が勝手に離脱を選択したのだから、交渉を自国に有利に運ぼうとしても無理があるとの見方が強く、最終的に「合意ある離脱」に到達できるかどうか、多くの不確定要因がある。

 「合意ある離脱」で交渉がまとまれば、移行期間などが設けられるため、英国に進出している企業も準備期間ができるため、ある程度は余裕を持った対応が可能だが、「合意なき離脱」になると、いきなり関税が掛けられたりして輸出する上で不利益を被ることになる。

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