海野素央の Love Trumps Hate

2019年2月12日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

(AP/AFLO)

 今回のテーマは「トランプのニクソン流一般教書演説」です。ドナルド・トランプ米大統領は5日夜(現地時間)の一般教書演説で、リチャード・ニクソン元大統領のスタイルを取り入れました。では、それはどのようなスタイルなのでしょうか。

 加えて、トランプ大統領は隠されたメッセージを盛り込みました。本稿では、これらを中心に演説を読み解きます。

米憲法を理解しないトランプ

 一般教書演説の中でトランプ大統領は、ロシア疑惑の捜査に関して、「ばかげた党派色の強い捜査だ」と激しく非難しました。同大統領の後ろに座っていたナンシー・ペロシ下院議長は、この発言に対して目を大きく開けて、驚きと不快な表情を浮かべました。

 ペロシ議長は、「大統領は、米議会が監視を行う憲法上の責任を果たさないように脅した」という声明を発表しました。同議長は、米議会がホワイトハウスを監視しなければ、「義務を不履行したことになる」と主張しています。

 下院には行政監視・政府改革委員会が設置されています。同委員会に所属するジェリー・コノリー下院議員(民主党・南部バージニア州第11選挙区選出)は、うえのトランプ大統領の発言について、「ブーイングに値する」と述べたうえで、与党共和党が上下両院の多数派であったために、「ホワイトハウスに対する米議会の監視が機能していなかった」と指摘しました。言い換えれば、行政府を監視すべき立法府が機能不全に陥っていたということになります。

 共和党出身の各委員会の委員長は、積極的にロシア疑惑及びトランプ大統領の納税申告書などに関する公聴会を開催してきませんでした。しかし、昨年の米中間選挙で野党民主党が下院を奪還したので、コノリー議員は「今後、米議会のホワイトハウスに対する監視機能が正常化するだろう」とみています。

ニクソン流一般教書演説とは?

 トランプ大統領は、一般教書演説という大舞台で「ロシア疑惑の捜査終了」を米国民に訴えたのです。実は、今から45年前に、一般教書演説で同様のスタイルをとった大統領がいました。

 ウォーターゲート事件で、弾劾になる前に辞職したニクソン元大統領です。同元大統領は1974年の一般教書演説で、「捜査は終了するときがきた。ウォーターゲート事件の捜査は1年に及び、もうこれで十分だ」と主張しました。以前述べましたが、トランプ大統領は若きビジネスマンだった頃、同元大統領から1通の手紙を受け取り、かなり影響を受けています。

 ただ、今回のトランプ大統領のロシア疑惑に関する捜査批判の発言は、完全に「政治的やぶへび」になりました。議会民主党は、ロシア疑惑を捜査するロバート・モラー特別検察官に批判的なマシュー・ウィタカ司法長官代行を対象に公聴会を開催しました。トランプ大統領の納税申告書並びに不法移民の親子分離政策に関する公聴会も開かれる予定です。「ばかげた党派色の強い捜査」発言で、議会民主党のホワイトハウスに対する監視は、ますます厳しくなっています。

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