海野素央の Love Trumps Hate

2019年1月21日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

19日ワシントンで行われた反トランプデモ「女性の行進」 3回目の開催となった(AP/AFLO)

 今回のテーマは「2回目の米朝首脳会談」です。ホワイトハウスは18日、2回目の米朝首脳会談が「2月末あたり」に開催されると発表しました。サーラ・サンダース報道官は、「開催場所については後日発表する」と説明しました。

 1回目の米朝首脳会談は昨年6月12日、シンガポールで開催されましたが、それ以降北朝鮮の非核化に関して大きな進展は見られません。手詰まり感が強まる中、2回目の首脳会談で事態が打開できるのか、注目です。

 本稿では、1回目と2回目の米朝首脳会談の相違を中心に述べます。

米朝首脳会談の日程に影響を及ぼした要因

 金恩正(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の側近の1人である金英哲(キム・ヨンチョル)同党副委員長は、昨年6月1日にホワイトハウスを訪問し、ドナルド・トランプ米大統領に金委員長の親書を手渡しました。その後、2週間足らずで、1回目の米朝首脳会談が開催されました。

 ただ、今回は事情がまったく異なります。金英哲氏が1月18日にワシントンを訪問し、トランプ大統領と会談を行いましたが、開催時期は2月末になりました。同大統領にとって、2回目の米朝首脳会談の緊急性が本当に高ければ、1月末ないし2月上旬になったかもしれません。

 いまトランプ大統領の最優先課題は、2016年米大統領選挙における「公約の中の公約」である米国とメキシコとの「国境の壁」建設と、連邦政府機関の一部閉鎖の再開であることは間違いありません。米メディアによれば、連邦政府機関の一部閉鎖により、約42万人の政府職員が無給で仕事を続けており、約35万人が自宅待機を余儀なくされています。 

 これらの内政問題の目処が立ってから、2回目の米朝首脳会談に取り組もうとするトランプ大統領の思惑が透けて見えます。つまり、「国境の壁」建設予算及び政府機関の一部閉鎖の問題が、首脳会談の日程に影響を及ぼした可能性が高いといえます。

 ということは、仮に「国境の壁」建設予算をめぐるトランプ大統領と議会民主党との対立並びに連邦政府機関の一部閉鎖が、2月末まで続けば、2回目の米朝首脳会談の延期も当然あり得ます。「2月末あたり」という曖昧な表現がそれを物語っています。

 逆に、トランプ大統領が国内問題から外交問題に有権者の目先を変えようとすれば、予定通り首脳会談は開催されるでしょう。

1回目VS. 2回目

 確かに、1回目の米朝首脳会談は歴史的な会談でした。しかし、具体的な成果が乏しく、政治ショー的な色合いが濃く出た会談であったことも事実です。

 実際、トランプ大統領は首脳会談の直前、「金委員長に会ってお互いに知り合うことが重要だ」と発言していました。人間関係の構築を前面に出し、会談を通じて得る成果に対する期待値を下げたわけです。

 マイク・ペンス米副大統領は、1回目の米朝首脳会談の批判をかわそうとしたのか、昨年11月に放送された米NBCテレビとのインタビューの中で、2回目の首脳会談について「北朝鮮がすべての核兵器と核開発関連施設の場所を明らかにすることと、査察官の受け入れと核廃棄の計画を認めることが、必須である」と述べました。そのうえで、「結果を出すときだ」と強調しました。

 歴史的な1回目の米朝首脳会談に対して、具体的な成果重視の2回目の首脳会談になるといえます。それだけに、米朝両国の実務者レベルのつめの作業が極めて重要になってきます。

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