2024年4月26日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年3月1日

会談と公聴会が同日になったワケ

 トランプ大統領は記者会見で、コーエン被告の公聴会に関して「すべて観なかった」と語り、「フェイク(偽)な公聴会だ」とレッテル貼りをして批判しました。そのうえで、「この重要な首脳会談を行ているときに、公聴会を開催した。2日後、あるいは来週に行うことができたはずだ」と、不満をぶちまけました。

 米朝首脳会談と同日にコーエン被告の公聴会が開催されていなければ、人道支援、連絡事務所の相互開設、ニョンビョン核施設の廃棄など低レベルの非核化で合意を得たのかもしれません。北朝鮮も開城工業団地及び金剛山観光の再開における特例のみを要求し、完全な制裁の解除までは求めなかったでしょう。

 そもそもコーエン被告の公聴会は2月7日に開催予定でした。ところが、コーエン被告がトランプ大統領と同大統領の弁護士チームの1人であるルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長によって、家族が脅迫を受けていると主張し、公聴会は同月末に延期になりました。

 そこで、ナンシー・ペロシ下院議長とイライジャ・カミングス下院監視・政府改革員会委員長は、米朝首脳会談の注目度を下げるためにコーエン被告の公聴会を会談と同日に開催したのです。その結果、トランプ大統領は米朝首脳会談が全米に生中継されるのを期待していましたが、コーエン被告の公聴会に奪われてしまいました。

 ペロシ議長とカミングス委員長の狙いは的中しました。記者会見で2人の術中に陥ったトランプ大統領は、非常に不快そうな表情を見せていました。


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