トランプを読み解く

2019年3月11日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 
写真:ロイター/アフロ

残虐な独裁者を「信じる」と明言するワケ

 ハノイで行われた米朝首脳会談で、北朝鮮から米国に帰国後死亡した米学生オットー・ワームビアさんの件について、金正恩氏は「事件を知らなかった」と関与を否定したところで、トランプ大統領は「(その説明を)信じる」と応じた。

 案の定、トランプ氏の対応には多くの非難が殺到した。残虐な独裁者を擁護するかのような発言は到底容認されるべきものではない。

 ところが、考えてみると、そもそもこんな事件で問い詰められた金正恩氏は、「はい、私が関与していました。申し訳ない」と素直に認めるはずがない。そこでトランプ氏は、「どう見ても、あなたが指示したのではないか」と追及しても、結局のところ水掛け論になり、会談も取引も何もできなくなる。

 国際政治の舞台は国益ないし支配者層の利益の最大化を図るうえで、愚直に真実を語る場ではない。嘘をつくこともつかれることも、日常茶飯事。トランプ氏が語る「信じる」というのも嘘である可能性が大いにあるだろう。そこでトランプ氏にそれが真意か嘘かを確認することも、額面通りに受け取りそれを批判することも、ナンセンスとしか言いようがない。

 さらに言ってしまえば、トランプ氏が金正恩氏のことを「素晴らしい指導者」と褒めたり、「相性が合う」と好意を示したりすることも、同じ性質のものではないかと思う。いちいちそのへんを追及しても建設的とはいえない。善悪の単純化された民主主義的な正義はときにナイーブすぎる。悪人の狡知や老獪な手口を否定したところで、民主主義自体の価値も毀損されかねない。

 しかし、残念ながらこの世の一般常識では、トランプ氏はやはり筋悪な異端児に分類されてしまうのである。

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