Washington Files

2019年4月8日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 シリア・アサド政権めぐり火花を散らせて来た米露両国が、今度は南米ベネズエラのマドゥロ独裁政権への対応めぐり対立を深めている。現体制批判を強め、軍事介入の可能性させちらつかせるトランプ政権と、先月、体制テコ入れのため急遽、軍用機で軍事顧問団を首都カラカスに送り込んだプーチン大統領―。このまま双方の駆け引きがエスカレートしていけば、同国の“シリア化”すなわち内戦も避けられない。

 シリア情勢をめぐっては、去る2011年、民主化要求運動“アラブの春”に触発された反政府勢力が、アサド独裁政権打倒めざし各地で政府軍と衝突、内戦が勃発した。しかしその直後から、かねてから経済および軍事的協力関係を強めてきたロシアおよび、同じイスラム教シーア派のイランがアサド政権支援に乗り出したのに対し、アメリカ、フランス、イギリスのほか、イスラム教スンニ派のサウジアラビアなどが反政府軍支持に回った結果、一国内の問題にとどまらず、外国勢力を巻き込んだ複雑な対立と利害関係のからんだ深刻な国際問題にエスカレートしたまま今日に至っている。

首都カラカスで抗議する人々(Molina86/gettyimages)

 そのシリア情勢に酷似しつつあるのがベネズエラだ。

 世界有数の産油国として知られてきたベネズエラでは、2018年5月の選挙で、ニコラス・マドゥロ現職大統領が再選を果たしたものの、今年1月、野党指導者で国会議長だったフアン・グアイド氏が「選挙は正当性に欠け無効」として自らが「暫定大統領」就任を宣言、それ以来、軍事独裁体制を維持してきたマドゥロ大統領と民主化運動の指導者として高い人気を誇るグアイド氏の「二人の大統領」が国を分断統治するという異常事態が現出した。

 しかし、ここまでは内政上の混乱にとどまるはずのものが、諸外国が双方に分かれて介入し始めたことから、一挙に国際問題としてクローズアップされてきている。

 まず、最初に動いたのが、同国の石油資源に大きな関心持つアメリカだった。

 ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は1月27日、ツイッターを通じ「ベネズエラの民主的リーダーであるグアイド氏および国民議会に対するいかなる暴力や威嚇も法の支配に対する重大な違反行為であり、それに対してはアメリカはきちんとした対応をする」と述べ、現政権に警告を発すると同時に、グアイド支持を明確にした。同時にマドゥロ政府に対する経済制裁も発動した。

 その翌日にはトランプ大統領がグアイド氏に直接電話を入れ、「アメリカは民主回復のためのグアイド氏の戦いを支えていく」としてより踏み込んだ介入意欲を示した。また、大統領は2月、米CBSテレビとのインタビューで「軍事介入も選択肢のひとつ」とさえ語っている。

 これを受けて多くの中南米諸国はもとより、英仏独などの欧州同盟諸国そして日本など50カ国以上が同様に、グアイド暫定大統領支持の立場をあいついで明らかにした。

 しかしBBC放送によると、3月23日、現地ベネズエラ人ジャーナリストの目撃情報として、ロシアがアメリカの出方に反発、現政権支援を意図したロシア軍用機2機が首都カラカス近郊のシモン・ボリバル国際空港に到着した。軍用機からは軍事顧問およびロシア軍兵士約100人が降り立ったほか、各種兵器類35トンが積み下ろされたという。ロシア国営ノーボスチ通信も、ロシア軍用機の到着を確認、その目的は、ベネズエラ軍側との「軍事協力の一環」と報じた。

 ロシアは昨年12月にも、Tu-160長距離爆撃数機をベネズエラに派遣、合同演習に参加させたばかりだった。

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