田部康喜のTV読本

2019年5月23日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(LightFieldStudios / iStock / Getty Images Plus)

 フジ・カンテレ系列「パーフェクトワールド」(毎週火曜よる9時)は、下半身不随の松坂桃李演じる建築士と、インテリアコーディネーターを目指す事務員役の山本美月による、正統派の純愛ドラマである。障害者が抱える苦悩を通奏低音にして、ふたりの誤解とすれ違い、次々に立ちはだかる壁が、ふたりの愛を揺さぶる。視聴率はいまひとつながら、今季ドラマのなかで心にしみる秀作である。

介護の資格を取るために専門学校に通うが……

 「桐島、部活やめるってよ」(吉田大八監督・2012年)の輝くばかりの美少女役で鮮烈な映画デビューを果たした、山本美月も本ドラマでは、実年齢を超えた29歳の川奈つぐみを演じている。

 つぐみが務めているインテリアデザイン会社と、一級建築士・鮎川樹(あゆかわ・いつき、松坂桃李)が所属している設計事務所は仕事上のつき合いがある。両社の打ち合わせがきっかけとなって、つぐみは、高校時代の憧れの同級生である樹(松坂)と再会する。

 事故で半身不随になった樹は、婚約者の雪村美姫(水沢エレナ)から別れを告げられ、二度と恋愛はしないと決意していた。心を閉ざした樹をつぐみの愛が徐々に溶かしていく。高校時代に美術部に所属していた、つぐみは美術鑑賞を理由にして樹を外出に誘うのだった。

 しかし、展覧会が開かれていた会場はエレベーターがなく、樹は鑑賞できない。身体障害者が抱える問題が、つぐみにのしかかってくる。下半身不随の樹は、排尿はカテーテルを尿道に挿入して自分で処理すると告げ、注意していても年に1、2度は尿漏れに気づかないともいう。ふたりで外出中に実際、尿漏れが起きる。

 樹は事故にあって、入院中に下半身の自由がきかなくなったことを悲観して、自らの両手をのどにあてながら絞めて自殺しようとした。看護師の長沢葵(中村ゆり)が「頭と手が動くだけでも、あなたは幸せよ」と思い止まらせた。それがきっかけとなって、葵はいまでは樹のヘルパーとして自宅に通ってきては体調の管理ばかりでなく、料理もしている。樹には内緒にしているが、離婚している。

 つぐみが取った行動は、樹には内緒で介護の資格を取るために週に2回、専門学校に通うことだった。インテリアデザイン事務所で才能が認められて、インテリアコーディネーターを目指すことを勧められ、実際に仕事も任されるようになった彼女が、専門学校から帰宅して未明まで介護の勉強をするようになる。疲労が溜まっていって、体力の限界が近づいていた。

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