Wedge創刊30周年記念インタビュー・新時代に挑む30人

2019年7月16日

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山田敏弘 (やまだ・としひろ)

国際ジャーナリスト

講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本誌などを経て、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の客員研究員として国際情勢やサイバー安全保障の研究・取材活動に従事。著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)など。

 

本記事掲載のWedge5月号『創刊30周年記念インタビュー「新時代に挑む30人」』では、「ホンダジェット」の生みの親・藤野道格氏ラグビー日本代表・リーチ・マイケル氏USJ復活の立役者でマーケターの森岡毅氏大峯千日回峰行を満行した大阿闍梨・塩沼亮潤氏など様々な分野で令和の時代を牽引していく30人にインタビューを行いました。

昨年の日本におけるサイバー犯罪の検挙数は9000件に上り、脅威は日々増している。インターポールで世界の犯罪と対峙する分析官が指摘する、日本の課題とは。

福森 大喜(ふくもり・だいき):1979年生まれ。サイバーディフェンス研究所でコンサルティング業務などに従事していた2013年から、国際刑事警察機構(ICPO=インターポール)のサイバーセキュリティ専門機関「IGCI(インターポール・グローバル・コンプレックス・フォー・イノベーション)」に出向。(写真・阿部卓功)

 2000年、大学生だった福森大喜は、課題で作ったプログラムにセキュリティの欠陥があると先生から指摘された。脆弱性(ぜいじゃくせい)を調べる中で、サイバーセキュリティの面白さにはまっていった。ハッキング大会などに出場するようになり、日本のサイバー界にその名を轟(とどろ)かせた。今ではインターポール(国際刑事警察機構)のサイバー捜査部門で、日々世界で起きるサイバー犯罪を捜査する分析官として活躍する。16年にバングラデシュ中央銀行から約8100万ドル(約90億円)が盗まれた攻撃の捜査などに協力してきた。

 そんな福森の目に、日本のサイバーセキュリティの現状は「世界でも評価の高い米国、オランダに比べるとまだまだ積極的な捜査ができていない」と映る。今やサイバー犯罪の多くは、闇サイトなどを舞台に繰り広げられている。米国のサイバー犯罪捜査では、違法な薬物や拳銃などを販売する闇サイトを潜入捜査で乗っ取り、犯罪者を一網打尽にするほどアグレッシブに行っている。日本では、そうした捜査はできない。福森に言わせれば、変化する犯罪に対する捜査において、法整備が遅れているからだ。さらに、「そうした犯罪に対峙(たいじ)するための技術へのチャレンジすらしていない印象がある」という。

 サイバー人材を生かす仕組みづくりも課題だ。米国では軍などで活躍した人材を、国が民間企業と協力しながらブラッシュアップしているが、日本ではトップ人材を生かしきれていない。技術力は決して低いわけではない。だが、最近日本で、悪意のない簡単なコンピュータープログラムを作成してネット上に公開したプログラマーが検挙されるという事件が相次いだように、凶悪な案件に人を割かず、本質からずれた捜査が少なくないと福森は懸念を示す。

 「小学校でプログラミングが必習化されるなど人材育成には乗り出しているが、当局がサイバー分野を理解していない状況では、育った人材が日本に残ってくれるとは限らない」。だからこそ、関連制度の強化が求められる。

 今後は途上国支援とともに、先進国の先端技術の研究を進めたいという福森だが、その成果を日本にも還元する日がくるはずだ。日本のサイバー防衛に、世界を熟知するその力がますます必要になるだろう。

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