Wedge創刊30周年記念インタビュー・新時代に挑む30人

2019年6月1日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

本記事掲載のWedge5月号『創刊30周年記念インタビュー「新時代に挑む30人」』では、「ホンダジェット」の生みの親・藤野道格氏ラグビー日本代表・リーチ・マイケル氏USJ復活の立役者でマーケターの森岡毅氏大峯千日回峰行を満行した大阿闍梨・塩沼亮潤氏など様々な分野で令和の時代を牽引していく30人にインタビューを行いました。

日米関係をより深化させるために在米日系人が果たす役割は大きい。日本人に対して、日系人が知っていてほしいこととは何か。

jpアイリーン・ヒラノ・イノウエ:カリフォルニア州ロングビーチ生まれの日系三世。1992年ロサンゼルスにある全米日系人博物館の初代館長を務める。2008年に非営利団体の米日カウンシル(U.S.-Japan Council:USJC)を創設。(写真・井上智幸)

 第二次世界大戦の英雄で、知日派として知られた故ダニエル・イノウエ上院議員(1924~2012)の妻であるアイリーン・ヒラノ・イノウエに、日米関係を強化していくために必要なことは何か聞いた。

 ダニエルは、日系二世としてハワイに生まれ、第二次世界大戦では日系人部隊で欧州戦線に従軍して右腕を失った。彼らが従軍した背景には「母国である米国へ忠誠を示す」という思いがあった。真珠湾攻撃から2カ月後の1942年2月以降、米国にいた日系米国人、日本人移民は敵国人として強制収容所に入れられた。

 「現在、米中摩擦があり、中国系米国人にも影響を及ぼしています。それぞれに異なる背景を持つ米国人にとって、出身国の存在は大きく、その国と米国との関係も重要です。だからこそ日系人として期待するのは日米関係が今後も良好であることです。

 日系人が経験してきたことをもっと日本の人々が学んでくれることを望みます。多くの日本人は一世や二世たちが第二次世界大戦中にどのような経験を強いられたのかについてあまりよく知らないでしょう。

 9・11の後、米国人の中にはイスラム系、アラブ系米国人を強制収容所に入れろ、と言いだす人もいました。日系人にとって、それはかつて自身に起こったことでした。そのため日系人には、特定の人々への不公正な決断に反対し、(対象となる人々を)救う、特殊な役割がある、と感じました」

 こうした思いを持つアイリーンは、現在「米日カウンシル」(2008年設立)の会長として日米の若い世代を中心とした交流に対して支援を続けている。

 「米日関係というのは米国のアジア諸国との関係の中でコーナーストーンとなるような、根本的に重要なものです。だからこそ、米日関係を支援する次世代リーダーの育成が必要です。そこで多くの日系人リーダーに声をかけ、日本についてより学ぶよう働きかけ、日本を訪れ米日関係に参加するよう呼びかけたのです。

 東日本大震災を機にTOMODACHIイニシアチブを発足、現在では、米日の若者合計約7800人が、異文化交流のプログラムを終了しています。また、若い日本人が米国で、米国人が日本で学ぶための奨学金制度を設立しました。米日カウンシルの目標は、米日関係の重要性を若いリーダーたちに理解させていくことです」

 筆者自身、異文化交流を専門とする研究者(心理学博士)として計13年米国に滞在した。年を経るたびに感じたのが、薄れていく米国における日本人の存在感だった。米国に流入する数では、中国や韓国に劣るとしても、米日カウンシルなどを通じて、「質」として日米関係がより強固なものになっていくことを願いたい。

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