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2019年6月27日

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永井隆 ((ながい・たかし))

ジャーナリスト

1958年群馬県桐生市生まれ。明治大学卒業後、東京タイムズ記者を経て、1992年にジャーナリストとして独立。雑誌や新聞、ウェブで精力的に執筆する。著書に『移民解禁 受け入れ成功企業に学ぶ 外国人材活用の鉄則』『EVウォーズ』『アサヒビール30年目の逆襲』『サントリー対キリン』など。

 ルノーとのせめぎ合いを経て、株主総会で統治(ガバナンス)改革に関わる定款変更が可決された日産自動車。しかし、経営の独立性を確保したい日産と、日産を経営統合したいルノーとの攻防は、これから激化していくのは間違いない。果たして、日産はこの先、どこへ向かっていくのか。

AP/AFLO

 「西川(廣人・日産)社長には、頑張ってもらいたい」、「ルノーとの関係は平等ではない。いまは統合すべきではない」、「ルノーは経営統合を強いるのか。議案に1度は賛成しながら反対に転じたのは、背信行為だ」…。横浜市で6月24日に開かれた120回目の定時株主総会。3時間17分に及んだ総会で、22人の株主が質問に立ったが、西川社長への支持とルノーに反発する意見が、それなりに多かった。昨年11月のゴーン元会長の逮捕以降、日産の株価は低迷しているのにだ。

 日本社会では、経営統合を含め敵対的なM&A(企業の合併買収)に対する拒絶感が、相変わらず根強いことを浮き彫りにもした。伝統企業である日産の一般株主にはOBも多く、出身企業の経営安定を願う向きが主流といえよう。

 とはいえ、”安定”とは異なる状況に、いまの日産は置かれている。

 昨年11月のカルロス・ゴーン元会長の逮捕を受け、日産はガバナンス改革に着手。

 その柱としたのが、従来の「監査役会設置会社」から、社外取締役により経営の監視を行う「指名委員会等設置会社」への移行だった。ところが、日産株の43%をもつルノーは日産の経営への関与が薄れるとして、これに反発。総会での採決を棄権する意向を一時は示す。仮に棄権していたなら、定款変更はできなかった。

 このため、役員人事を決める「指名」、経営の執行を監査する「監査」、役員報酬を決める「報酬」の3委員会のうち、ルノーのジャンドミニク・スナール会長を指名委に、同じくティエリー・ボロレCEOを監査委の委員とすることで、何とか折り合いをつけた。

 「ルノーの経営関与が強まることはないし、絶対させない」。こう語った西川氏だが、これからどうしていくのか。

 基本のシナリオとしては、日産の独立性が確保できた時点で退任していく。「次世代の経営者に移行できるよう、スピードを持って準備する」(西川社長)。ポスト西川としては、6月16日付でCOOに昇格した山内康裕氏が有力だ。

 だが、それ以前にルノーそしてフランス政府からの統合への圧力に対抗する必要に迫られる。2社を束ねたカリスマ経営者が退場したため、日産は独立性を自力で勝ち取っていかなければならない。場合によっては、1999年以来のルノーとの関係を清算し、新たなパートナーとの資本関係をつくっていくことまで、視野に入れてもである。

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