2024年5月4日(土)

田部康喜のTV読本

2019年9月26日

最新カメラ技術で迫る選手の視線

 今回の番組は、昨年10月のオールブラックスとオーストラリア戦において、撮影した「自由視点映像」から、秘密に迫った。まず、オーストラリア陣地の奥まで迫った、バレットが迫る敵陣に対して、体を前に倒して自分の股の間から味方にパスしたトリッキーなスーパープレーの分析である。次に、守備から攻撃に移る「ターンオーバー」の瞬間に、全員が一瞬にして攻撃に移る巧みさである。

 前回大会の日本チームで、エディ・ジョーンズコーチの片腕となって、戦略、戦術を組み立てた、沢木敬介は自由視点映像のオールブラックスの動きを見て「選手の視線のクセがみてとれて面白い」という。

 オーストラリアの15回にも及ぶ連続攻撃をしのいだ、オールブラックスは敵がパスミスしたボールを奪った瞬間に攻撃に出る。この直前のスタンドオフのバレットの視線を自由視線映像で追っていくと、彼はチームの後方に位置して、攻撃に移った場合に味方にパスがしやすいスペースを探して、視線を縦横に走らせている。オーストラリアチームが連続攻撃によって披露して、視線がうつむいている瞬間に、バレットは味方の選手ともアイコンタクトなどによってスペースの位置について、情報共有している。

 オールブラックスの強さの秘密は、相互の信頼と瞬間の情報共有にあったのである。チームのモットーとして、マオリ語の「ファーナウ(家族)」がある。

 チームのなかには、マオリを祖先に持っている者、入植した欧米系の者、隣国の島諸国からきた者など、多様性に富んでいる。「ファーナウ」に一致団結する厳しい練習と連帯がある。

 筆者は、日本と同じ予選プールのアイルランド対スコットランド戦を観戦した。スコットランドに1トライも許さないアイルランドの攻撃と守備に死角はないように、素人目には見えた。

 第2回は「日本代表 “奇跡”の先へ」(9月27日)である。大会の進行とともに、ラグビーの魅力を伝えるシリーズに期待したい。

  
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