田部康喜のTV読本

2019年8月17日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 TBS・日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」は、池井戸潤原作のドラマシリーズの主演に、これまでとは意外性のある大泉洋を起用して、新たなリーダー像を描こうとしている。トキワ自動車の経営企画戦略室の次長というエリートの君嶋隼人(大泉)が、上司が推す買収案件に異を唱えたことから、府中工場の総務部長に左遷させられる。君嶋を待ち受けていたのは、弱小のラグビー部・アストロズのゼネラルマネジャー(GM)という兼務職だった。

jacoblund / gettyimages

 池井戸シリーズは、「半沢直樹」の堺雅人、「ルーズベルト・ゲーム」の唐沢寿明、「下町ロケット」の阿部寛と、いずれも日本を代表する俳優としてリーダー役にふさわしい。

 俳優としてばかりではなく、コメディアン、声優など多彩な才能を誇る、大泉洋のキャスティングは冒険とも感じられる。相手役の鋭いつっこみを、苦笑いを浮かべながらかわすように反応する演技の面白さが、大泉の身上のようにみえるからだ。

 大泉の最近の映画作品を顧みるとき、今回のドラマの君嶋のように、周囲の人々巻き込んで前向きに変えていきながら、困難を打開していく主人公を演じても、一級であることがわかる。「こんな夜更けにバナナかよ」(前田哲監督、2018年)では、難病で車椅子生活ながら、わがまま放題にボランティアたちの協力を仰ぎながら、自立生活を成し遂げる患者を演じた。「アイアムヒーロー」(佐藤信介監督、2016年)では、パンデミックスに侵されたゾンビと散弾銃で戦う中年を演じた。

 ドラマは、ラグビー部・アストロズの再生の物語と、君嶋が反対したカザマ商事の吸収合併劇が織りなされて進行している。いずれも、君嶋の前に立ちはだかるのは、常務の滝川桂一郎(上川隆也)である。経費削減の一環という名目でアストロズの廃部を図ろうとする。アストロズの黒字化を迫ったのに対して、君嶋は日本リーグでの優勝を条件として存続を求めた。合併案において、大学の同期であるカザマ商事の社長の風間有也(中村芝翫)と策謀を練っている。

 滝川にとっては、社長の島本博(西郷輝彦)を追い落として、社長の座に就く策略である。アストロズは、島本の肝いりで創部された。カザマ商事の合併によって、経営の主導権を握ろうとしている。

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