地ビールブームとの違いは?
クラフトビールとは、小規模な醸造所で多様につくられる手作り感に溢れたビールを指す。同じ「インディアペールエール(IPA)」でも醸造所や醸造家により、味わいは違う。
少品種大量生産に支えられる大手4社が手掛けるビール、発泡酒、第3のビールは、澄んだ淡色でホップの苦味を利かせた「ピルスナー」タイプが大半なのとは、一線を画する。
日本では1994年の地ビール解禁が起源。この年、国はビールの最低製造数量を年2000キロリットルから年60キロリットルへと緩和させたのだ。当時の大蔵省(現在の財務省)は、新しい産業として期待を寄せていた。
現実に地ビールはブームとなり、一気に300社近くが参入する。しかし、数年前の中国のEV(電気自動車)ブームと同様に、国の政策によって勃興した色彩は強く、参入業者は玉石混淆だった。”町おこし”を目的とした第3セクターなどは、事業への執着はどうしても薄かった。価格の高さや、何より品質やおいしさなどから、撤退は相次ぎブームは一過性で終わる。
それでも、”ホンモノ”は残る。その結果、13年頃からブームは再燃。「地ビール」だった呼称が「クラフトビール」へと代わり始めると、勢いづいていく。
メーカー数は16年の約200社に対し現在は400社を超えている。ビール類市場を100%とすると、16年は0.6%程度に相当していたのが、「19年は数量で1%を超える見通し」(キリン)と言う。ちなみに、ビール類のシェア1%は約5万キロリットルであり、1億人が500ミリリットルの中瓶(あるいはロング缶)を一斉に飲んだ量に相当する。もちろん、価格は高いので、金額シェアなららに大きくなる。「94年の時と現在とでは、ブリュワー経営者の事業への志が違う。みんな専門家であり、自分たちがつくりたいビールを主体的につくっています」と島村。
一方、日本の4倍以上あるアメリカのビール市場で、2000年代に企業再編が本格化した後からクラフトビールは急成長。クラフトのブルワリー(メーカー)数は5000を超え、日本とは桁が違う。市場規模だが、販売数量ベースではビール全体の13%を超え、金額ベースでは24%を占める(いずれも18年)。価格は高くとも個性的なビールが高く支持されているが、こうした流れは日本にも訪れつつある。
20年10月から酒税改正が行われる。ビール、発泡酒、第3のビールと3層ある税額が、20年10月、23年10月、26年10月と3段階で統一されていくのだ。こうしたなか、キリンにはクラフトビールにかける、ある思いがある。
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