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2020年1月3日

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永井隆 ((ながい・たかし))

ジャーナリスト

1958年群馬県桐生市生まれ。明治大学卒業後、東京タイムズ記者を経て、1992年にジャーナリストとして独立。雑誌や新聞、ウェブで精力的に執筆する。著書に『移民解禁 受け入れ成功企業に学ぶ 外国人材活用の鉄則』『EVウォーズ』『アサヒビール30年目の逆襲』『サントリー対キリン』など。

 新年を迎え、多くの人がビールグラスを傾けている。ただ、このグラスの中身が少しずつ変化している。気がつけば、「クラフトビール」が外食を中心に勢いを増しているのだ。メーカー数はこの3年間で倍増の400社を超えた。特に若者から支持を受けているのは特徴だが、そんなクラフトビールは我が国に新しいモノづくりを創出し、さらにはスーパーやコンビニ中心の従来型流通からの脱却への突破口となるのか。クラフト各社に突撃取材を試みる。第1回目は、大手のキリンビールから。

(ViewApart / gettyimages)

「10年前、客単価がやや高い居酒屋で供していた日本酒は、伏見や灘にある大手のものだけでした。ところがいまや、新潟や会津など地酒がメニューの多くを占めてます。10年後、ビールも同じ現象が起こるはず」

 キリンビール企画部部長で、ブルックリンブルワリー・ジャパン副社長を兼務する山田精二は指摘する。山田はかつて、主力ビール「一番搾り」のブランドマネージャーを務めた経験を持つ。

 キリンは15年1月、「スプリングバレーブルワリー」(SVB・東京都渋谷区)を設立し、クラフトビール事業に参入。同年春には、東京都渋谷区代官山と横浜工場内に小規模醸造設備を併設するビアレストランをオープンさせる。現在まで京都にも同じく醸造施設付き店舗をもつほか、東京銀座には醸造設備のないビールパブを出店している。

 一方で、海外の名門クラフトビールのM&A(企業の合併買収)も展開中だ。

 16年にはアメリカ東海岸で人気を博する「ブルックリン・ブルワリー」(ニューヨーク州)に24.5%出資。日本国内での一部ブランドの生産と販売に乗り出した。

 17年に設立したブルックリンとの合弁会社「ブルックリンブルワリー・ジャパン」(東京都中野区)は、20年2月に旗艦店となるパブ「B」を東京都中央区日本橋茅場町にオープンさせる。約20種類のクラフトビールを提供するだけではなく、ダンスや音楽などの情報発信をする常設拠点としていく。ブルックリンは世界32の国や地域に進出しているが、こうした店舗は世界初。

 18年にはイギリスのクラフト「フォーピュア」を、19年にも同「マジックロック」を、いずれもオーストラリアにあるキリンホールディングスの子会社「ライオン」が買収した。ライオンそのものもオーストラリアでクラフトビールを展開している。

 さらに、アメリカのクラフトビール3位の「ニュー・ベルジャン・ブルーイング」(コロラド州)の買収を19年に決める。やはりライオンを通し、2020年3月末までに全株を取得していく。ニュー・ベルジャン・ブリューイングは1991年の創業。ベルギータイプのクラフトビールを複数ブランド手掛ける。18年の売上高は約2億ドル(約218億円)の規模だ。

 もっとも、最初の出資は国内。SVBよりも早い14年9月、クラフト最大手の「ヤッホーブルーイング」(長野県軽井沢町)と資本業務提携し、ヤッホー株の33.4%を取得した。当時、それなりの資金が必要な設備投資ができずにいたヤッホーだったが、提携によりキリンがヤッホーブランドの一部を受諾生産している。

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