2022年8月8日(月)

Wedge REPORT

2020年1月3日

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永井隆 ((ながい・たかし))

ジャーナリスト

1958年群馬県桐生市生まれ。明治大学卒業後、東京タイムズ記者を経て、1992年にジャーナリストとして独立。雑誌や新聞、ウェブで精力的に執筆する。著書に『移民解禁 受け入れ成功企業に学ぶ 外国人材活用の鉄則』『EVウォーズ』『アサヒビール30年目の逆襲』『サントリー対キリン』など。

 なお、世界の有力クラフトビールを買収するのは、キリンだけではない。サッポロビールは17年、サンフランシスコの名門「アンカー・ブリューイング・カンパニー」を約95億円で買収。世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ブリュッセル)も、シカゴの「グースアイランド」を買収した。いずれも、ビール類市場の縮小が続く日本での販売に乗り出している。

中小メーカーとともに挑む

 キリン・クラフト事業の中核であるSVBの二代目社長、島村宏子は言う。

「いまはクラフトビールの勢いに乗り遅れないようにするのが大変。早い判断は求められています。市場を成長させるため、同じクラフトビール間、そして地域などとの連携が大切」

 キリンは、その年に収穫した国内産ホップを使ったクラフトビールイベント「フレッシホップフェスト」を15年から毎秋、開催している。5回目となった19年の開催期間は9月から11月の3カ月間で、参加したクラフトビールメーカーは約100社。国内約400社の4分の1に相当する。100社は国産ホップを使用したビールを醸造して、参加飲食店(約1500店)のどこかで供した。

 ホップ農家も参加していて、原材料の生産者からメーカー、料飲店とを巻き込んで、連携を構築させている。

 こうしたなか、キリンが展開しているのが、4種類のクラフトビールを提供できる「タップマルシェ」という簡易型ディスペンサー。クラフトビールは3リットルのペット容器に入るが、ペット容器を簡単に交換できるのが特徴だ。

 2017年春から一都三県で試験運用を始め、18年春からは全国に展開。「(19年末までに)1万3000軒の飲食店に導入されていて、いまも増え続けている」と島村。

 山田によれば、「全国に飲食店は約60万軒あり(16年)、46軒に1軒はタップマルシェが入っています」と話す。キリンが扱うSVBやブルックリンの商品だけではなく、現在は13社のクラフトビールメーカーの商品も、タップマルシェのラインアップに入っている。

 クラフトビールに限らず、中小メーカーが自社商品を広く展開しようとしても、配荷するのがどうしても難しい。商品化はできても、ロジスティクスまでは手が回らない。まして、新鮮さが求められるビールとなると、なおさらだろう。

 この点、タップマルシェではキリンの物流網が利用される。地方であっても、クラフトビールは、キリンによって飲食店へと配送される。キリンは、”利用料”をメーカーから受ける仕組みだ。

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