日本の漁業は崖っぷち

「獲れない、売れない、安い」 深刻な事態に直面する日本の漁業
国際的視点で日本の水産業を捉えよう

片野 歩 (かたの・あゆむ)  水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

日本の漁業は崖っぷち

成長する世界の水産業の中で、取り残されてしまっている日本。潜在力はありながらも、なぜ「もうかる」仕組みが実現できないのか。海外の事例をヒントに、解決策を探る。

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日本は将来、「買負け」よりも
深刻な事態に直面する

(図3)世界の1人当たり食用水産物年間消費量の推移
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 しかし、順風満帆のようだった買付けによる水産物の輸入は大きな転換期を迎えています。世界の水産物需要の増加で、他の国々と競合するようになって来たのです。すでに日本の輸入数量は01年の380万トンがピークで年々減少しているのです。11年は270万トンでした。世界の水産物供給量(見掛け上の消費量)は、1961年の一人当たり9.0kgから2007年には16.7kgと大幅に増加してきています(図3)。

 世界の人口は2011年の11月には70億人を超えて増加を続けているのです。日本の一人当たりの数字は減少が続き、2007年には56.9kgに減少していますが、世界全体の数字は、日本の減少する数字も含めて増加を続けているのです。

 「買負け」という言葉が出始めた頃は、実際には価格を上げていけば玉(=水産物)の確保はできていました。しかしながら、各国の水産物需要の増加に伴い、事情は大きく変わってきています。近い将来「買負け」というより、玉の確保自体が難しくなってきてしまうのです。

 買負けが始まる前の輸入業者としての日本側の立場は、非常に強いものでした。日本側としては、国産より安いと思っていても、輸出国側としてはそんなに高く買ってくれるのかという価格だったのです。買付け競争というのは、日本の輸入業者間で行われるものであり、他の国のバイヤーとの競合は気になりませんでした。買付けに際しては、最初に、見た目が良くサイズの大きいものや、脂がのったものといった良いものを先に買取り、残りが他の国や、その国の自国消費用に販売されていくのが普通だったのです。輸出国は販売価格が高く、支払いにおける信頼も高い日本にまず販売しようと考えており、日本に販売することは、品質が高いことを認められていることと同じ意味であり、ステイタスでした。

日本以外の国々の購買力向上
その陰で起こる危機

 ところが、状況が変わってきました。日本以外の国々の購買力が高まり、日本向けの販売価格と変わらなくなってきたのです。また、新規参入の国々のバイヤーは、水産物の品質の違いが良くわかっていないことも多く、日本が買わないような品質のものでも、日本と同じ価格で買わされてしまいます。すると輸出業者は、日本側に「どこそこの国では、この品質でも日本と同じ価格を支払っても買いたいといってくるので、日本向けの品質が良いものについては価格を上げたい」といってきます。

 実際には、品質があまり良くないものを高値で買わされて、それをその国の市場で順調に販売できるほど、販売は甘くないのですが、需要そのものが増加しているという背景もあり、結局は何とか販売できて、また買付けにきたり、新たな別のバイヤーが同じ国からきたりしますので、売れ残った良いものを安く買える機会はめったになくなりました。それどころか、まず日本の会社に紹介してよいものを選んでもらうという形ではなく、はじめから各国に割り振ってから、オファーが来たものに対してYesかNoを求めるタイプや、オークションにかけて高値で売る等、日本側にはすっかり主導権がなくなってきています。他国の輸入は毎年伸びていますので、ほとんどの主要水産物において、日本向けの比率は毎年減少しているのです。

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「日本の漁業は崖っぷち」

著者

片野 歩(かたの・あゆむ)

水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

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