日本の漁業は崖っぷち

2012年5月15日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 皆さんにとって、日本の漁業、水産業とはどんなイメージでしょうか? 

幕末の時代と類似する日本の水産業

 水産資源の減少による水揚げの減少、高齢化と後継者不足、漁業従事者の減少、必ずしも十分でない収入、魚離れで消費が減少等のマイナスイメージが強く、衰退していく一次産業の象徴という感が否めないのではないでしょうか?

 残念ながら、これらはすべて当てはまっており、統計の数字にもはっきり表れています。しかし、この現実は、日本特有のものであり、世界の潮流とかけ離れてきてしまっているのです。ちょうど欧米で産業革命が進んでいるときに、日本が鎖国をしていて、世界の潮流を知らなかった幕末の時代に類似しているように思えます。それほど、日本人が理解している水産業と、世界の水産業の現実は異なっているのです。

早い者勝ちのオリンピック方式が招く資源の減少

 必ずしも世界各国の水産業が成長しているわけではありませんが、衰退している国々と成長している国々には、それぞれはっきりした共通点があるのです。成長を続ける国々は、科学的な根拠をもとに漁獲できる数量を、漁業者や漁船ごとに決めて、それを厳格に守っています(個別割当方式)。これに対し、早いもの勝ちの漁獲方式(オリンピック方式)を採用している国は、日本も含め、資源状況を考えずに漁獲を続けてしまうことになり、必然的に資源は減少を続けているのです。

 魚が獲れなくなるだけでなく、小型化して売れず、また価値も安くなってしまうのです。これが、「獲れない、売れない、安い」という漁業者にとって最悪の事態を引き起こしていくのです。早い者勝ち方式は、良くないとはわかっていても、小型の魚だからといって見逃しては、他の漁業者に獲られてしまうだけということになってしまいます。結局は、海上投棄含め資源にとってさらによくないことを繰り返してしまうのです。

必要なのは「漁獲量の制限」

 資源を守る方法の一つとして「禁漁期の設定」があります。これはこれで必要な制度ですが、結局は漁期中にできるだけ獲りたいという「競争」が発生してしまうことになるので、十分ではありません。最も重要なことは、「漁獲量そのものの制限」なのです。どれだけ水産資源があり、持続的に資源を残していくためには、最低どれだけ産卵できる資源を残さなければならないのかということなのです。未成熟の小型の魚などは獲らずに、成長し成熟した価値の高い水産物を獲り続ける仕組みを作り、それを厳格に守っていくことが、北欧をはじめとする国々で既に成功結果がでているやり方です。

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