チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年6月22日

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 今年3月23日夕、中国黒竜江省のハルビン医科大学付属第一病院で、難病患者の少年A(17)がナイフで医師を刺し、1人が死亡、3人が負傷した。

医師、病院不足が深刻

 中国では質の高い医師と病院が絶対的に不足、病院の営利主義もはびこり、医師と患者の関係が悪化、患者が医師に暴力をふるう事件が頻発している。「患者の医師への不信感は限界点に達した」。中国の主要メディアはハルビン医科大事件の特集を組み、「医療の貧困」に警鐘を鳴らした。

 社会派の人気女性作家、六六さんはこうした医療問題を扱った小説「心術」を執筆。同事件の後、ドラマ化した「心術」が放送されると、庶民の大きな話題になり、高い視聴率を記録した。

 なぜ「殺医」(医者殺し)「医閙」(医療トラブル)という新語ができるほど、中国の患者たちは医者や病院に対して怒っているのか。中国メディアの報道から同事件を再現し、医療問題の現状を探った。

「病気の苦しみを理解してもらえず」

 「女の大きな悲鳴が聞こえたので事務所のドアを開けたら、血だらけの床に医師が倒れていた」。女性看護師は震える声で事件を振り返った。少年Aは病院前のスーパーで果物ナイフを買い、医師の事務所まで戻って、4人の医師に襲いかかった。

 殺された医師はインターンの王浩さん(28)。事件から5日後、王さんが待ち望んでいた香港大学博士課程の入学許可書が届き、同僚たちの涙を誘った。

 Aはくびや腰、手足の関節などが動かなくなる慢性の免疫疾患、強直性脊椎炎を患っていた。リウマチに似た難病で、治療は難しく、薬で進行を遅らせることしかできなかった。Aは事件後「病気の苦しみを何度も医師に訴えたが、理解してもらえず、発作的に襲ってしまった。罪もない医師を殺すべきではなかった」と語った。

 医者の側に手落ちはなかったようだ。

「医者殺し」 65%が支持

 凄惨な事件は中国全土の医療関係者を震え上がらせた。さらには事件についての世論調査が医師の怒りと悲しみをかきたてた。インターネットの世論調査で、事件について、回答者6161人のうち65%に当たる4018人が「うれしい」と回答したのだ。

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