韓国大統領の「踏み絵」となった竹島訪問

国連海洋法条約に基づく強制調停を


小谷哲男 (こたに・てつお)  日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

安保激変

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8月10日、韓国の李明博大統領が竹島を訪問した。韓国大統領の同島訪問は初めてだ。日本側の中止要請を無視する形で訪問が強行されたことは、今後の日韓関係を極めて厳しいものにするだろう。すでに日本政府は、駐韓大使を一時帰国させ、国際司法裁判所への提訴や日韓シャトル外交の凍結を含めた対抗策を検討しているが、韓国政府が態度を軟化させることはないだろう。代わりに、国連海洋法条約に基づく強制調停制度を活用した打開策を提示したい。

「竹島をいっそ爆破してしまいたい」

 日韓が領有権を主張する竹島は、事実上韓国の実効支配の下にある。1952年に韓国の李承晩大統領が一方的に漁業管轄権を宣言した海域に竹島が含まれたが、このいわゆる「李承晩ライン」は公海上に管轄権を宣言するもので国際法上認められるものではない。だが、韓国は54年以降竹島に武装警備隊を常駐させ、同島が不法占拠されている状態が60年近く続いている。

 1905年に日本政府は竹島が無主地であることを確認して領有を宣言したが、韓国政府は同島が元々韓国領だったと主張し、言い分が真っ向から対立している。韓国では、日本による竹島領有が一連の朝鮮半島統治の始まりと考えられていて、日本による竹島領有の正当化も植民地支配も正当化するものとみなされてしまう。これは支配した側とされた側の歴史観の相違であり、双方にとって譲ることができない問題なのだ。

 竹島自体に戦略的価値はなく、実際には漁業権のみが争点といえる。だが、竹島をめぐる問題は長らく日韓関係に携わる者にとって頭痛の種となってきた。日韓国交正常化交渉時に、双方が竹島をいっそ爆破してしまいたいと発言したことが記録されているが、日韓両国ともに竹島で争うことが国益ではないと認識している証左である。1999年に発効した日韓の漁業協定が竹島の存在を無視する形で同等周辺に暫定水域を設定したことからみても、双方の政府に竹島の領有権問題を棚上げして両国間の協力を強化する意図がみてとれる。

低い支持率に苦しむ李大統領

 では、なぜ李大統領は竹島訪問を強行したのか。

 韓国の大統領は1期5年で再選は認められていない。このため、5年で政権目標の達成を迫られるが、韓国政治は保革・地域・世代間対立が激しく、政権への支持を維持することは容易ではない。また、ひとたび支持率が低下すれば政権はそのまま死に体になってしまう。このため、政権の任期が終わりに近づくと支持率回復を狙って日本叩きを始めるというのが韓国の民主化以降定着したパターンである。

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「安保激変」

著者

小谷哲男(こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

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