世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年9月5日

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 米ジェームスタウン基金の”China Brief”の編集者Peter Mattis氏が7月13日付The Diplomat誌のウェブサイトに、中国における真の軍事上の懸念は、文民指導者たちが、解放軍から上がってくる情報とは別に、どこまで異なった情報、知識などを入手して、総合的に的確な判断を下せるかにある、と論じています。

 すなわち、今日、PLA(人民解放軍)の全貌は明らかではないが、党内におけるその影響力は拡大しつつある。問題なのは、胡錦濤や習近平が、どこまでPLAの能力や限界を理解し、PLAが提案する選択肢を的確に処理できるかである。

 現在のPLAの影響力及び特徴としては、次の4点が挙げられる。

 1)PLAは共産党中央委員のメンバーの20%以上を占めている。彼らの中から政治局員、政治局常務委員が選出される。PLAは今秋の党大会において選ばれる指導者を拒否するだけの力をもっていると見るべきだろう。逆に言えば、軍は、政治的に野心をもつ指導者たちから、なんらかの譲歩を引き出し、約束をとりつけ、PLAの優先事項を支持させることが出来る程、その影響力は大きい。ただし、中央委員会の軍人が、どの程度まとまっているのか、軍内に派閥があるのか等については、即断できない。政治局に2人の軍人が入っており、常務委員会には軍人が入っていないことを見れば、党内での軍の活動は、間接的であり、必ずしも日常的に行われているわけではないのかもしれない。

 2)PLAは指導部に政策の選択肢を提示することが出来る。1995-96年の台湾海峡危機の際には、PLAが台湾軍や米国軍に対し出来ることは、ほとんどなかった。しかし、今は状況が異なる。今日では、リビアからの中国人の避難、湾岸での海賊対策、台湾への軍事的威圧などについては、指導部に対し、意見を進言する能力を持つ。

 3)PLAは軍事専門家として、陸、海、空、宇宙における広範な分野での能力を高めてきた。朝鮮戦争(1950年代)、中越戦争(1979年)の頃の軍と比べれば、その能力は比較にならない。

 4)今日の中国の文民指導者たちは、直接軍事についての経験を有していない。そのため、毛沢東、鄧小平と異なり、彼らは知識・情報について、PLAに全面的に依存しなければならない。

 欧米とは異なり、中国では、軍事専門家以外の人たちによる軍事分析というものが発達してこなかった。米国の場合、大統領府は国防総省の評価と異なった評価を、シンクタンクなど十数か所に求めることが出来る。しかし、中国では、中南海の人たちが、PLAとは無関係な機関からの評価を入手することが出来るのかという問題がある。

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