世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年10月19日

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 元駐イラク米大使のジェイムス・ジェッフリーが、9月8日付WP紙掲載の論説で、シリアのアサド政権が崩壊すると、スンニー派とシーア派との宗教対立が、国境を越えて全中東に広がる恐れがあるので、米国は、敵はイランの政権とアサド政権であるがシーア派は敵視しないという態度を明らかにすべきである、と論じています。

 すなわち、筆者は、イラク在任時、超宗派の統一イラクを強く支持している或るイラク・クルド人が、「自分はアサド支持者ではないが、もしシリアで騒動が起きると、それは、まずシリア、そしてイラク、ついで全中東地域を宗派的に引き裂くことになると懸念する」と話していたことを想い出す。

 アサド政権が崩壊すると、宗派対立が全中東に及ぶ恐れがある。イラクのアルカイダは反シーア闘争をシリアに持ち込む恐れがある。湾岸諸国の指導者たちは、宗教指導者がシーア派を背教者と呼ぶのを止めようとしていない。

 過去の中東紛争では国家が主体であったが、今回は宗派対立中心となる恐れがある。その最初の場となるのは、レバノンとイラクであろう。

 米国はまずシリア情勢の早期収拾をはからねばならない。長引くと宗派対立が激化する。そして、米国は、この地域の米国の友人たちの意向に反して、シーア派はアメリカの敵でないことを宣言すべきだ。シーア派のイランとイラクを合わせただけで、サウジを含む湾岸協力会議諸国の石油埋蔵量の三分の二、世界の20%を占めることを示すだけでその重要性は分かるだろう。

 米国はまだ宗派対立を抑えることが出来る。そのためにただちに行動しなければならない、と述べています。

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 シリアのアサド政権の崩壊については、アラブ世界におけるイランの最大の足場が失われるとして歓迎する言説があります。また、欧米では、自国民の大量虐殺を行っているアサド政権が崩壊することを、人道的な観点から、支持しないわけにはいかないという状況でもあります。一方で、実は、アサド政権崩壊は、各方面の関係者が内心では望んでいない事態でもあります。

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