2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年10月19日

 イスラエルは、「知らない悪魔より、知っている悪魔の方が良い」と言って、地域の安定要因としてアサド政権を評価していました。CIAは、シリアの情報機関とはかねて深い関係にあり、中東情勢、とくにシリア・イラク国境におけるアルカイダの動向についてシリアの情報に頼るところ大きかったという事実もあります。西側諸国がシリア内戦介入に及び腰である背後にはこういう事情もあるようです。

 ただ、アサド政権の崩壊に最も危惧を抱いているのが、イラクとレバノンであるということが、ここで改めて指摘されています。イラクでは、過去の支配階級であったスンニー派が、シーア派多数の政権支配をかこっており、レバノンでは、かつてはテロリスト集団に過ぎなかったヒズボラが政権を支配しています。それに対する憤懣はいつ爆発するか分かりません。隣接するシリアにスンニー派多数の政権ができることは、それを触発させる恐れがあります。

 イラクにおける宗派対立をなんとか抑えて国家の統一維持に尽力してきた元駐イラク大使の筆者がこれを憂慮するのは、これまた、当然のことでしょう。また、その対策として、米国が敵視しているのは、イランの現政権とアサド政権だけであり、シーア派とは敵対しないと宣言するということは、建設的な提案ではあります。ただし、その実効性のほどは分かりません。

 ジェッフリーは、シリア紛争が長引くと宗派対立が激化するので、早期解決に米国が力を貸すべきだと言ってはいますが、実際は、アメリカに出来ることはあまりないと思われます。

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