世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年11月2日

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 米CSIS(戦略研究問題研究所)上級顧問で中国の専門家であるクリストファー・ジョンソンが、同研究所のウェブサイトに9月20日付で「中国との米の軍事的な結び目を修復する時」と題する論説を掲載し、米中軍事交流を修復すべしと論じています。

 すなわち、米中軍事関係は長い間壊れているが、最近の地域での緊張の高まりの中で、この問題をもはや無視することはできない。東・南シナ海での主権紛争は米をそれに引きこむ危険があるが、それを防止したり、うまく管理する手段がない。

 パネッタ国防長官の訪中は、高いレベルでの接触維持に貢献したが、実務レベルでの持続的な協力がない。防衛協議(DCT)は相互不満の表明の場に堕し、2008年に設置されたホットラインも適切に使われていない。

 何故、ここまで関係が機能していないのか。

 北京での主要な障害は、人民解放軍かもしれない。旧世代の軍指導者は米軍との関係を求めたが、若い世代は米中軍事接触にあまり価値を置いていない。さらに中国の政治システムが多極化するにつれ、軍は自律性を強めている。党が銃を支配するとの毛沢東の言明はまだ有効だが、米が文民指導者に話せば結果が得られる、というような時代は過ぎ去ってしまった。軍の外交安保への発言力は強まっており、制服の指導者と話す必要がある。

 米側の、関係改善への主要な障害は、米軍と人民解放軍との関係に対する議会による制約だ。2000年の国家防衛支出権限法は国防省が「国家安全保障上の危険を生じさせる」軍事交流などを国防省に禁止している。こういう漠然たる禁止は、中身の乏しい交流しかできなくして、防衛協議を内容のないものにしている。人民解放軍は、米による、台湾への武器売却、中国沿岸での偵察行動と並べ、この制約を3つの障害の一つとしている。これを見直すことが必要だ。

 これらの問題に取り組まないと、米中の不信の高まりが出てくる。クリントン国務長官は北京で「確立した大国が台頭する大国に直面した時に何が起こるかの問題についての新しい答え」を探すと言ったが、両国間の軍事交流の本当の改善なしに、そういう答えは見つからないだろう、と述べています。

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 米中が軍事的な交流を行うこと自体は結構なことであり、緊張が高まる東アジア情勢の中で、それが重要であることは否定できません。特に、この論説も指摘するように、現在、中国では軍の外交安保面での影響力が強くなって、「今起きていることは中国の軍事的台頭というより中国の軍の台頭と呼ぶべきだ」という指摘すらあるぐらいですから、米中の軍事的交流の意義はあります。

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