しかし、東アジアでの緊張は、中国が強引な領土主張をしていることに根本的な原因があるのであって、米中軍事交流を復活させることは問題の解決策のほんの一部にしかならないでしょう。あまりその効果を過大評価するべきではありません。
中国は、これまで米中軍事交流を停止し、その再開のために米側に何らかの譲歩を迫るのとのやり方を繰り返しています。こういう悪癖を助長しないようにする考慮が必要になります。
米議会による制限については、議会側はペンタゴンをもっと信用してもいいのではないかとも思われますが、「国家安全保障上の危険を生じさせる」軍事交流の禁止は当然のことであり、これが大きな制約になるという議論は、いささか理解しがたいものです。そういう交流をしなくとも、意味のある対話は十分に可能なはずです。
台湾への武器供与停止を軍事交流の再開の条件とするなど、中国のこれまでのやり方に振り回されないためには、「米中軍事交流は衝突回避のために不可欠」というような考えはせず、双方の利益になることであると粘り強く中国側に説くのがよいでしょう。「嫌なら嫌でも結構」という強い姿勢を取ることこそが、意味ある交流につながるように思われます。
尖閣問題について、パネッタ国防長官が日米安保条約の適用があると言ったのに対し、劉光烈国防大臣はそれに断固反対すると言い、人民解放軍として行動する権利を留保すると言っています。対話によって、このような事態を変えられるのか、大いに疑問です。結局、対中抑止力強化が、唯一、事態を変えることのできる方策です。それをやらないで、費用のかからない、政治的にも容易な策があるかのような幻想に流れないことが重要です。
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