落ち目の有吉弘行をあえてレギュラーに
再ブレークに導いた広島県メディア

「平清盛」より「おしい!広島」?


小田桐 誠 (おだぎり・まこと)  ジャーナリスト

1953年、青森県生まれ。亜細亜大学法学部卒業。出版社勤務を経てフリーのジャーナリストに。2004年7月から4年間、放送専門誌『GALAC』編集長。現在、法政大学と武蔵大学社会学部兼任講師。BPO(放送倫理・番組向上機構)「放送と青少年に関する委員会」委員、NPO法人放送批評懇談会常務理事・選奨事業委員長。近著に『NHK独り勝ちの功罪』(ベスト新書)がある。

故郷のメディアはいま

地方を読み解くための「カギ」は、ローカルメディアにある――。かつての行政主導の時代を経て、今はメディア自らが、地場産業や地域のイベントの復活などを通じて、町を活性化している事例がたくさんある。それらを紹介しながら、ローカルメディアの価値を見直すきっかけを提示する。

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松山ケンイチ主演の『平清盛』は一部評論家の評価は高いが、NHK大河ドラマ史上最低の平均視聴率を記録しそうだ。それだけに平家ゆかりの地は、意気消沈しているのではないか。そんな予想をして10月上旬、厳島神社がある広島県宮島町を尋ねた。だが平日にもかかわらず、厳島神社周辺はもちろん、清盛が崇拝した霊山「弥山」山頂、紅葉谷駅と獅子岩駅を結ぶロープウェーは、団体客やカップルなどで大賑わいだった。

 世界遺産・日本三景「宮島・弥山」だけではなく、歌川広重が描いた《安芸宮島祭礼之図》などを展示した「清盛とその時代―兵どもを支えた女性たち―」(海の見える杜美術館)、清盛と宮島の関連を表す史料や大河ドラマ出演者が着た衣装・道具等を紹介した「平清盛館」(宮島歴史民俗資料館内企画展示)にも観光客は足を運んでいた。大河ドラマ『平清盛』の放送回数が残り少なくなった故の名残惜しさもあるのかもしれない。

『平清盛』関連報道に明け暮れた1年

 NHK広島放送局発の中国ブロック・県内向けの報道・情報番組はもちろん、県内の民放ローカル局、中国新聞を始めとする地元の新聞も『平清盛』』関連報道に明け暮れた1年だった。日頃ライバル関係にある民間報道機関としては、「NHKを象徴するドラマの宣伝に繋がるだけに複雑な思いがありますが、県や地元自治体挙げてセールスプロモーションを展開しているだけに無視するわけにいかない」(中国新聞関係者)のだ。

 その清盛との相乗効果を狙ったのか、広島県は今年3月有吉弘行(“ひろゆき”ではなく”ひろいき”と読む)を県の観光大使に任命、「おしい!広島」キャンペーンを始めた。

 県は地元メディアはもちろん、ポスターやネットで全国的にキャンペーン広告を展開。有吉が発表したスローガンに、県民たちが「おしい!」とは何事か、と激怒し……。豪華ゲストと凝った演出の観光キャンペーンムービーも話題になっていった。こうなると広告禁止の公共放送NHKも「おしい!」を無視するわけにいかない。ブロック番組や県内のローカルニュースで取り上げるという、『平清盛』とはまったく逆流した現象が起きたのである。

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「故郷のメディアはいま」

著者

小田桐 誠(おだぎり・まこと)

ジャーナリスト

1953年、青森県生まれ。亜細亜大学法学部卒業。出版社勤務を経てフリーのジャーナリストに。2004年7月から4年間、放送専門誌『GALAC』編集長。現在、法政大学と武蔵大学社会学部兼任講師。BPO(放送倫理・番組向上機構)「放送と青少年に関する委員会」委員、NPO法人放送批評懇談会常務理事・選奨事業委員長。近著に『NHK独り勝ちの功罪』(ベスト新書)がある。

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