世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年12月6日

»著者プロフィール

 10月19日付ウェブNational Interest誌で、T. X. Hammes米国防大学国家戦略研究所主任研究員は、エアシーバトル(ASB)は、単に、A2/ADに対抗するためと説明されているが、特定の戦略的環境の下で評価されるべき戦略であり、国防省は、いずれにしても、今後、対中政策に多大の投資をしなければならないのだから、ASBが全般的な対中戦略の中に占める位置づけをはっきりさせるべきである、と述べています。

 すなわち、ASBは、戦術として論じられている。しかし、ASBが重視している宇宙・サイバー分野の戦争を考えると、先制攻撃が極めて有利な結果をもたらすので、それは、また、反対側がそれに対応して核戦争にまでエスカレートする危険を孕んでいる。

 戦術は、特定の戦略的環境の中で考慮されるべきである。ナチスの電撃作戦は、フランスに対しては有効だったが、ソ連に対しては失敗した。

 ASBはイランと中国に対するものと言われているが、イランについてはホルムズ海峡封鎖能力を破壊するという戦略的目的達成が可能であるが、中国に対しては、何が勝利かのシナリオが全く見えていない。

 米国のディフェンス・コミュニティーは、ASBについて単なる戦術的、技術的説明にとどまらず、いかにして中国に対して勝利を収め得るかと言う軍事戦略を示す必要がある、と論じています。

 誰もが心の中で考えていることを、はっきり言っただけの論文とも言えますが、問題の本質を衝いています。

 ASBの概念は、2010年のQuadrennial Defense Review(QDR)で明らかにされたものと記憶しますが、その当初から、本来は対中戦略を記述すべき章を、中国という名を表に出さず、A2/ADとして記述されたもので、よく読めば、対中戦略を意識していることは明白なような記述でした。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る