世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年8月13日

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 英IISS(国際戦略問題研究所)が、近刊のブリーフィング・ペーパーにおいて、「エア・シー・バトル」をどう位置づけるか論じたうえ、「アジアへ」「陸軍から海空軍へ」という2つの「ピボット」を読み取るべきだと結論づけています。

 すなわち、米国はいま、エアシーバトル構想(ASBC)の目的が「アジアのパートナーを安心させる」ところにあるとして同盟国へ説明しに回っているが、その背後には、「広範なトレンド」がある。

 背景にあるのは、グローバルな勢力バランスの変化、ならびに、陸より海に焦点が変わったという趨勢だ。もっぱら陸上勢力だった国々、とりわけ中国が海洋権益の保全へ乗り出すにつれ、海洋は、今までになく混み合う競争的な場となった。中国海軍は2008年来、海賊予防活動に従事するため域外での作戦を続行しているが、これは過去六百年間で初めての行為である。中国、アジア各国の洋上貿易が増えるにしたがい、貿易路を守ろうとする新たなインセンティブも生まれた。

 イラク、アフガニスタンに10年費やした米国に、イランが心配だとはいっても、この先また長い陸上作戦をやろうという気持ちはほとんどない。そこで、海と空に焦点を移しつつある。すなわちアジアへの軸足移行(ピボット)とは、軍事戦略における海・空へのピボットでもある。

 ASBCが持ち得る最大のインパクトとは、アジア域内力学に対するものである。ASBCは、「接近阻止・領域拒否(A2AD)」能力に立ち向かうところにその眼目がある。それがたとえどんなチャレンジを課すものであろうが、米軍にはこれに適応するだけの意欲・能力がともにある。――このことを潜在的ライバルなかんずく中国に対して警告しようとするところにエッセンスがある。ひとつのシナリオとして、紛争初期段階で米軍は中国本土に集中的攻撃を加え、A2AD能力を無力化しようとするという、そういうエスカレーションも考えられる。

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 このペーパーからは、以下のような諸点が再確認できます。

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