チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年12月18日

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 中国の歴史上、農村部での生活基盤を失って都市部に流れてくる「流民」の存在は常に王朝にとっての大いなる脅威であった。行き場を失った流民の暴発はいつも、王朝崩壊の引き金となるからだ。今の中国共産党政権は果たして、億単位の「現代流民」の「集団的憤怒」の爆発を防ぐことができるのだろうか。もしそれがうまく出来なかったら、天下を揺るがすような大乱が「近いうち」に起きてくるのはけっしてあり得ないことではない。習政権樹立後における暴動の多発は、まさに天下大乱が起きてくることの前兆と見てよいであろう。

対外的な強硬政策で国民の目を外に向かわせる

 さて、習近平政権は今後一体どうやってそういう人々を手なずけて民衆の爆発を防ごうとするのだろうか。おそらく彼らに残される最後の有効手段の1つは、すなわち対外的な強硬政策を推し進めることによって国民の目を外に向かわせることであろう。

 実際、習政権はその発足からの数週間で、海軍の「虎の子」の新空母で初の着艦試験を成功させたり、東シナ海と南シナ海でそれぞれ軍事演習を実行したり、フィリピンなどと領有権を争う南シナ海周辺を自国領と紹介する軍監修の地図を発売したりして、軍中心の挑発的な行動を頻繁に展開し始めている。

 そして習総書記自身、11月29日、6人の政治局常務委員らを伴い北京市の国家博物館を訪問して中国近現代史の展覧会を参観した後に、「アヘン戦争から170年余りの奮闘は、中華民族の偉大な復興への明るい未来を示している」などと国民に語りかけた。約10分の演説で、彼は「中華民族」や「(中華民族の)偉大な復興」という言葉を合わせて20回近く連呼した。11月15日の総書記就任披露目の内外会見でも、彼の口から頻繁に出たキーワートの1つはやはり「民族の偉大なる復興」なのである。

 かつての江沢民政権と同様、ウルトラ・ナショナリズムに縋(すが)ってそれを国内危機脱出の手段に用いることはすでに、習近平政権の既定路線となっているようである。

「日本と闘争する」発言の重み

 そして今後、経済低迷のなかで流民の暴発などによる国内危機の拡大という局面にさしかかった時、習近平政権は結局、国内の混乱収拾のためにわざと国際的危機を作り出して国民の目を外に逸らすような方策に打って出るのであろう。そうなった場合、尖閣と日本はまさに、彼らにとっての格好の餌食となる可能性が大である。

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