日本の漁業は崖っぷち

2012年12月21日

»著者プロフィール
閉じる

片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 先月に引き続き、今月は後篇となります。前篇では、多くの方々からのポジティブな反響をいただきました。沿岸に面した被災地の復興には、水産業が欠かせないことは言うまでもありません。ところが、具体的なアクションを起こす際、すぐに直面する問題があります。それは、政策を実行するための手がかりと正確な情報の不足です。

「ノルウェー水産業に学び、東北水産業を日本一にするプロジェクト」のロゴ (宮城大学HP)

 せっかくのノルウェーでの成功事例も、意図的ではないにしても、事実と異なって伝えられていたり、その間違った事実をベースに議論が展開されたりしたら、良い方向に向かうはずはありません。第二次世界大戦時の大本営発表が正しくなかったことをご存知の方は多いと思います。「本当は負けている」という情報や、「米国の国力との大きな違い」については国民に正確に伝えられていませんでした。もし、戦時中に一般の国民が米国や戦場を直接視察できていたらどうだったでしょうか? 事実を知っていれば、その対応は変わっていたかもしれません。水産業においても同様なのです。だからこそ、実際の現場の実態を知ることができる今回のようなプロジェクトは、大きな意義があるのです。まさに「百聞は一見に如かず」です。

 視察された方々は、漁業、養殖、加工、行政他と様々な分野から選ばれているので、色々な角度からの感想、意見があり興味深い内容となっています。そこには、明確に共通している内容があります。それは、今回の視察を通じて「科学的な資源管理を行えば水産業は復活できる!」ということに自信を持っていただいている点です。

ノルウェーでの「気づき」を自分たちの現場へ

「実際工場に行って見ると本当に若い人たちがたくさん働いていました。彼らは1カ月仕事をして1カ月休むなど、誰もが望むような理想的な仕事のスタイルでした」
「獲り過ぎによる資源枯渇時、獲れない時代を乗り切ってきた資源調査・資源量の認識、漁獲量の適正管理・漁船の減船とライセンス譲渡の仕組みが物凄くマッチしていたため、今のノルウェーの漁業が成り立っていると各研修先で感じ取ることが出来ました」
「ノルウェーの各企業の意識が、資源管理を常に念頭に置いているというのは驚くべきことです」
「獲れる上限が設けられていれば、成長の限界があるのではと考えてしまうが、視察先の船主新造船から間もない船主ばかりで、数年後はまた建造予定であると聞き、成長に限界が来ているという要素は見られなかった」
「実際に乗船してブリッジ(操舵室)を見渡すと、大型の魚群探知機、レーダー、潮流計等、全て日本製なことに驚きました」

 上記は、視察された方々のコメントの一部ですが、日本の水産業との意識の違い・問題点について気付かれた記述が数多く見受けられました。現在、それぞれの現場に戻られて、自分が出来ることについて真剣に考えられています。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る